これは和歌山県沖の海域を、風車の設置に慎重になるべき順に『保全エリア』『保全推奨エリア』『調整エリア』の3つに分けるというもの。 2年前から検討会が開催され、ウミガメや野鳥の専門家からは四国との間の海域について配慮すべきという意見が出ていました。 しかしゾーニング案ではこうした海域も、もっとも保全優先度の低い『調整エリア』とされています。
検討会の発言はすべて匿名 「自由に発言してもらうため」 ゾーニングの検討会は、今まで2年間で6回開催。 委員は東京大学名誉教授の荒川忠一さんや和歌山大学教授の入野俊夫さん、ほか環境団体の代表や博物館の学芸員の方らで構成。 さらにオブザーバーとして、漁協や商工会議所が参加しています。 議事の要旨は県のホームージで公開されていますが、発言主はすべて「委員」「オブザーバー」など匿名になっています。 県の商工観光労働部では「特定の委員の名前を出して発言すると自由に発言しにくくなるため、委員名は公表しない、ということにしています」と話しています。 環境団体「エリアから避けるべき」 ゾーニング案に反映されず ゾーニング案では主に御坊〜串本の沖合、5キロ、もしくは10キロ〜30キロの沖合を「環境影響が比較的小さい(*1)」として『調整エリア』、つまり風車を建設しやすい海域としています。 検討会では、周辺の環境に関する機関や団体にもヒアリングが行われました。 NPO法人・日本ウミガメ協議会はヒアリングに対し、「ウミガメは海岸域に滞留するのではなく、和歌山県と徳島県を移動している。これら、産卵期間中の遊泳地(印南町〜白浜町の沿岸とそこから四国に向かう沖合)は高事業性エリアからは外す必要がある」と回答していました(*2)。 しかしゾーニング案では、印南〜白浜から四国方面の沖合も『調整エリア』に。 また(公財)日本野鳥の会も、「みなべ町付近から四国を結んだラインの北側のエリアもなるべく避ける必要がある」と回答していましたが、みなべ付近から四国方面の沖合も『調整エリア』になっています。 県の商工観光労働部では、「『調整エリア』はかならず事業をしていいというエリアではなく、留意事項は全調整エリアについて検討を求めています。意見を無視しているわけではありません」と話しています。 想定は風車50基。なのに写真は4基だけ? 世界遺産の登録解除危ぶむ声も ゾーニング案では、沖合に大型風車が50基程度設置される発電所を想定。 衣奈海岸や白崎海岸、天神崎や円月島などの眺望点からの海の風景に、風車の画像を合成したモンタージュ写真を作成しています(*3)。 しかし想定しているのは50基なのに、モンタージュで合成されている風車は4基だけ。 唯一、煙樹ヶ浜のみ「参考」として50基を配置してモンタージュしており、水平線を風車が埋めつくす画像が作成されています。 今回ゾーニングされた地域は、沿岸部の一部に世界遺産・熊野古道が走っています。 委員会では景観に関する懸念として、世界遺産の登録解除を危ぶむ声も出ていました。 「もちろん、世界遺産の解除などはあってはならない事象であり、常に文化庁、ユネスコなどの関連団体と情報交換を行いながら、洋上風力発電の申請に対して個々に環境影響評価などを行うこととする(*4)」 熊野古道を含む世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は古道や神社仏閣だけでなく、「周辺の景観から成る文化的景観」が評価され、世界遺産に登録されています(*5)。 世界遺産ではドイツのエルベ渓谷が、コンクリート製の橋ができたことで景観が損なわれたとして、'09年に世界遺産の登録を抹消されています(*6)。 県の商工観光労働部によると、2月中に7回目となる検討会を実施。 3月末までにはゾーニング地域を公表したいとしています。
(*1)第6回検討会資料3_和歌山県洋上風力発電に係るゾーニングマップ及びゾーニング報告書(案)(www.pref.wakayama.lg.jp/ 前の記事 [3]白馬の風力、3社→2社に
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