Arikaina 2025/1 国がIRカジノの意向アンケートを実施
和歌山も再び立候補?

国がIRカジノの意向アンケートを実施 県、「関心がある」と回答


 3年前に県議会で否決され、頓挫したマリーナシティのIRカジノ計画。しかし観光庁が昨年、自治体にIRカジノを整備する意向があるかどうかのアンケート調査を実施していたことが分かりました。調査に対し、県は「関心がある」と回答したとのことです。


マリーナシティで計画されていたIRカジノのイメージパース(クレアベストグループによる事業者提案の概要より)

 昨年12月、「NESTBOWL」というサイトが、元観光庁長官の井手憲文さんのインタビュー記事を掲載。記事の中で井出さんはIRカジノについて「観光庁が12月にかけて自治体から意向の聞き取りを実施している」と発言していました。本紙で観光庁に問い合わせたところ、「事実として、アンケートを送っている」と回答。アンケートは全国の都道府県と政令指定都市に向けて送られたとのことです。和歌山県にも問い合わせたところアンケートがあったことを認め、「アンケート自体がIRの整備について関心があるかないかというお話であり、『関心がある』と答えている(県企画課)とのことです。

'22年に県議会で否決
マリーナシティのIRカジノ

 国は'18年にIRに関する法案を成立させ、その後、全国で3か所を上限にIRカジノを整備する自治体を募集しました。和歌山県もマリーナシティへの誘致を目指してカナダのクレアベストグループを事業者に選定し、IRカジノの計画を発表。総事業費は4千億円を超えるという巨大事業となっていました。

 しかし、クレアベストグループによる資金調達は難航。参加企業も広がりを見せませんでした。'21年からは県議会でIR対策特別委員会が開かれましたが、議員からは、事業の遅れについて厳しい声が相次ぎました。県民への説明会も議会での議決を前に駆け足での開催となり、和歌山市では住民投票を求める署名が提出され、海南市でも市議会に請願が出されるなど、地元からの反対の声も大きくなっていました。

 最終的には約3千億円をスイスの大手銀行「クレディ・スイス」が調達するとして、'22年4月に県議会での議決を迎えました。結果、4票差で否決され、県のIRカジノ事業は頓挫しました。「クレディ・スイス」は翌'23年に経営危機に陥り、同じスイスの銀行に買収されています。

現在は大阪のみ
国が再度募集か?

 国がIRカジノを整備する自治体を募集していた当時は、東京都や北海道、横浜市など、多くの自治体が誘致に意欲を見せていました。しかし最終的に申請したのは、大阪府・市と長崎県のみ。長崎県は国の審査により認定されず、現在は大阪府・市の計画のみが、'30年の開業を目指して進行しています。

 前回の申請から今年で3年。観光庁では「(再度募集するためには)政令を定める必要があり、現時点では再募集できる状態ではない」と話していますが、元観光庁長官の井手憲文さんは前述のインタビューの中で「大事なのは、観光庁が『いずれ次の募集がある』ということをしっかり伝えていかなければ(中略)2つめ3つめの募集はいつか必ずある、ということをきちんとアナウンスしていかなければならないと思います」と話しています。

 事業の遅れなどで頓挫した、和歌山のIRカジノ。国が再度募集を行えば、県はまた手を挙げることになるのでしょうか。

参考=和歌山県「知事からのメッセージ 令和4年5月10日」(https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20220510.html)/NESTBOWL「元観光庁長官・井手憲文さんに聞く、日本が観光立国になるためのIR(統合型リゾート)への期待と課題」(https://nestbowl.com/journal/15568)/和歌山県「『和歌山県特定複合観光施設設置運営事業』の事業者公募における優先権者候補の選定について」(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020100/d00207455.html)/Arikaina 2021/11「IRカジノ 県が住民対象の説明会」(https://arikaina.com/_article/202111/casino-1.html)/特定複合観光施設区域整備法(https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000080/20221101_502AC0000000033)/特定複合観光施設区域整備推進本部事務局「特定複合観光施設区域整備法に係る説明会 説明資料」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ir_promotion/horitsusetsumeikai/setumei_siryou.pdf)/首相官邸ホームページ「特定複合観光施設区域整備法案の概要」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ir_promotion/kokkaiteisyutsuhoan/gaiyou.pdf)/Arikaina 2022/4「説明会、各地域で1回ずつだけ…IRカジノ、県民にほとんど説明ないまま議決に突入」(https://arikaina.com/_article/202204/casino-1.html)/YouTube Sawa Yasu「和歌山カジノIR計画案 否決」(https://www.youtube.com/watch?v=sW0yfHITyvU)/和歌山市「条例の制定・改廃の直接請求について」(https://www.city.wakayama.wakayama.jp/shisei/koucho_iken/1041807.html)/海南市「市議会だより No68 2022.2.1」(https://www.city.kainan.lg.jp/material/files/group/4/dayori68.pdf)/野村総合研究所(NRI) 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight「UBSの買収完了でクレディ・スイス167年の歴史に幕:欧州でも貸出抑制で資金ひっ迫のリスク」(https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20230613.html)/Bloomberg「UBS、スイス金融界を変える歴史的な買収完了−クレディSは消滅」(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-31/SECK95T1UM0W00)/日本経済新聞「UBS、クレディ・スイス買収完了 投資資産470兆円に」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR112XV0R10C23A6000000/)/日経ビジネス電子版「クレディ・スイスとは? スイス第2の銀行を巡る買収劇の背景と影響」(https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/051100557/)/ロイター「クレディ・スイス破綻、新たな危機防止策必要に=スイス中銀」(https://jp.reuters.com/article/world/-idUSKBN2Y80B8/)/日本経済新聞「スイス金融当局、権限強化要求 クレディ・スイス破綻で」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR19CDE0Z11C23A2000000/)/北海道経済部観光局観光振興課「統合型リゾート(IR)」(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/integrated_resort.html)/特定複合観光施設に関する調査分析報告書|公表情報|東京都港湾局(https://www.kouwan.metro.tokyo.lg.jp/basic/announcement/irchosa)/横浜市「『横浜IRの誘致に係る取組の振り返り』について」(https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/toshiseibi/sogotyousei/IR/irfurikaeri.html)/大阪市「大阪へのIR誘致」(https://www.city.osaka.lg.jp/irsuishin/page/0000409560.html)/観光庁「九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画について」(https://www.mlit.go.jp/kankocho/news11_000001_00006.html)/国土交通省観光庁「特定複合観光施設区域整備計画の申請状況」(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/810000780.pdf)/大阪府ホームページ「大阪IRとは?」(https://www.pref.osaka.lg.jp/o080010/irs-kikaku/gaiyou/index.html)


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