Arikaina 2025/1 自然博物館を避難タワー兼用に?
結局、同じところで建て替えか

自然博物館が避難タワーに?県が検討委員会の議事概要を公開


 老朽化した建物をどうするか、今後の見通しが立っていない県立自然博物館(海南市船尾、以下博物館)。県は昨年11月に博物館の検討委員会を立ち上げ、昨年12月、第1回委員会の議事概要をホームページで公開しました。それによると委員会では防災対策をして現在の場所で建て替えるという意見が多く、防災対策としては「空き地に避難できる場所をつくる」「避難タワーを兼ねたような建物にする」といった案が出ていたようです。


海南市にある県立自然博物館
田辺市の津波避難タワー('13年撮影)

「国の防潮堤ができれば」「杭を49本打っている」
防災面の懸念、クリアできるか

 検討委員会のメンバーは、前博物館長の高須英樹さんはじめ6名。博物館は建物の老朽化のほか、海に面していることから津波による浸水被害も懸念されています。このため、以前は海から離れた海南市大野中への移転が計画されていました。しかし県の方針変更により、'23年に移転は断念されています。

 公開された議事概要によると、委員からは「国が整備している防潮堤が完成すれば、南海トラフ3連動地震でも浸水被害はほとんどない」「(現在の建物は)地中にコンクリート杭を49本打っており、地震による倒壊の危険はそれほどないと想定される」など、防災面の問題はクリアできるのではとして、現在地での建て替えを示唆する意見が多く出ています。

 現在の博物館は水槽での展示が中心となっていますが、大野中への移転が検討されていたころは「海水を運ぶ」「水族館機能を持たない施設にする」といった案が出ていました。現在地で建て替えするのであれば、水槽中心の展示を続けられることになります。

高層階の建物を想定?
知事「必要かどうかをふくめて議論を」

 議事概要ではさらに、「避難タワーを兼ねた建物にリニューアルすることで、収蔵庫のキャパシティを増やすことができる。また、近隣住民の避難場所になる」「展示物や収蔵庫を上の階(3階以上)に配置し、保管するのがベストではないかと考える」「来館者の避難も含めてできるような建物(収蔵庫ふくむ)が出来れば、かなりクリアできるのではないか」といった意見が出ており、現在地で建て替える場合は避難タワーなどの避難場所を兼ねたものにすることや、高層階の建物にすることが提案されています。


 博物館は1982年にオープン。大きな水槽展示で知られており、'23年の入館者数は約12万人と、現在でも多くの来館者を集めています。

 しかし岸本知事は'23年10月3日の記者会見で、「施設そのものが必要かどうかもふくめて、有識者の皆さんにご議論いただいたらどうかと思っています」と発言しており、博物館を存続するかどうかといった点から見直す方針を示していました。

 県教委では3月末までにあと2回検討委員会を開催し、知事に意見を提出するとしています。

参考=「第1回和歌山県立自然博物館検討委員会」議事概要 | 和歌山県教育委員会/https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/500100/d00218898.html/和歌山県立自然博物館整備基本計画(令和5年3月 和歌山県立自然博物館)//和歌山県立自然博物館「令和5年度 自然博物館の運営状況に対する評価書」/https://www.shizenhaku.wakayama-c.ed.jp/pdf/R5asses.pdf/Arikaina 2025/1 - 県が自然博物館の検討委員会を立ち上げ 年度内に3回開催、知事に意見を提出へ/https://arikaina.com/_article/202501/nature-museum-1.html/知事記者会見 令和5年10月3日 | 和歌山県/https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/press/05/10/20231003.html#d231003_qa


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