Arikaina 2025/1 「ワカヤマソウリュウ」の商標が出願される
商売に使われてる?

「ワカヤマソウリュウ」の商標を大阪府の人物が出願


 有田川町で発見された、巨大な海のは虫類の化石「ワカヤマソウリュウ」。この「ワカヤマソウリュウ」という名前を、大阪府の人物が商標出願していることが分かりました。県の教育委員会では商標を認定しないよう、特許庁に申し出るとしています。


'23年12月の記者会見で披露された、「ワカヤマソウリュウ」の化石と復元図 (C)Takumi

 (独)工業所有権情報・研修館による、特許や商標を検索できるサイト「J-PlatPat」によると、「ワカヤマソウリュウ」の商標出願は10月1日。出願人の住所は大阪府守口市となっており、ほか代理人として5名が名を連ねています。商標の対象となる商品やサービスは多岐に渡り、広告やさまざまなグッズでの使用、本の制作や映画の上映、さらには化石の展示にまで及んでいます。

 昨年12月に開かれた有田川町議会で、栗山昌之議員が「『ワカヤマソウリュウ』の商標登録を外部の人が申請している。(中略)登録される可能性は少ないと思いますけれども、もし仮に商標登録された時はリスクがあると思います」と質問。これに対し町の教育部長は「現在、県の方が対応してくれております。(中略)県は今後も『ワカヤマソウリュウ』が支障なく使えるよう、(中略)特許庁に申し出ると報告を受けております」と答弁しました。

 県の教育委員会(以下県教委)によると化石が紹介された新聞など、『ワカヤマソウリュウ』が広く知られている名前であることの根拠を集め、特許庁に申し出るとのこと。ただ出願が認められなかった場合も、「1回認定されなければ、再度認定されることはないと考えられる(県教委)」として、県として商標を取得することは考えていないとのことです。

 特許庁の商標審査基準室によると、著名な名前でも商標の出願自体はできるものの、基本的には審査で拒絶されるとのこと。ただし出願したすべての商品やサービスでは認められなくても、一部では認められる、といったケースはあるとのことです。

 今回も仮に一部でも認められた場合は、その用途については「ワカヤマソウリュウ」という名前を自由に使えなくなることになります。同室によると商標の認定にかかる期間は、出願から7〜9か月とのことです。

化石のレプリカが35万円?
Tシャツなど"非公認"グッズも

 「ワカヤマソウリュウ」は'06年に有田川町の鳥屋城山で発見され、県立自然博物館が発掘・調査を行ってきました。最終的にはほぼ全身の化石が見つかり、全長6メートルにもなる巨大な姿を現しました。'23年に同博物館が新種であることが判明したと発表し、学名とは別に通称として「ワカヤマソウリュウ」と名付けられました。

 昨年夏には同博物館で化石が展示されたほか、南海電車では車両のデザインにとり入れられたり、化石公開にあわせて作成されたぬいぐるみが人気を集めるなど、話題を呼びました。

 しかし人気が出たためか、ネット上ではTシャツやパーカーなど、県や博物館の"非公認"グッズも登場。昨年はさらに「博物館で展示されたレプリカと同じ3Dデータ」を使うと称する原寸大の化石レプリカが、ネットで35万円で販売されるという事態も。県教委によると、これについては県からの申し出で販売がとり止められたとのことです。

 こうした動きに対し、県教委では「(「ワカヤマソウリュウ」を)広くみなさんに使ってもらいたいというスタンスです。商標については独占という形であり、それでは困るということで止めにいっている状態です」と話しています。

 昨年夏の展示会や南海電車のイベントなどで知名度が上がり、すっかり地元の人気者になった「ワカヤマソウリュウ」。しかしその名前の保護や、営利活動に利用するさいにどうするべきなのかは、今後の課題と言えそうです。

参考=特許情報プラットフォーム「J-PlatPat [JPP]」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)/Xユーザーの商標速報bot 8号さん(https://x.com/trademark_bot_8/status/1843878857809469497)/有田川町議会インターネット議会中継 令和 6年12月定例会(第2日12月12日)(https://www.kensakusystem.jp/aridagawa-vod/video/R06/R061212-3.html)/和歌山県立自然博物館「和歌山で発見された モササウルスの新種ワカヤマソウリュウ 和歌山滄竜」(https://www.shizenhaku.wakayama-c.ed.jp/wakayamasouryu/index.html)/Arikaina 2024/7「特別展にロゴに電車の床に…この夏大活躍!ワカヤマソウリュウ[1]」(https://arikaina.com/_article/202407/wakayama-souryu-1.html)/和歌山県教育委員会「2023.12.13_記者発表_有田川町産出のモササウルス類は新属新種!! −これまでの学説を覆す新たな発見−」https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/500000/d00215304_d/fil/wakayamaensis.pdf/BOOTH「和歌山の大スターな和歌山滄竜(ワカヤマソウリュウ)さんTシャツ」(https://booth.pm/ja/items/5854714)/クリエイターのオリジナルグッズ販売のオリラボマーケット「ワカヤマソウリュウ軽量プルパーカー (長袖プリント)の商品購入ページ」(https://market.orilab.jp/item/657d65c3d5024?srsltid=AfmBOopHEt5QSGGvuepa3MI8KzgZUJ39kAxSri_E2eKBM1fXvJF5AtCi)/アンフィ合同会社「ワカヤマソウリュウ 原寸大復元頭骨レプリカ 和歌山県で発見されたモササウルス!」(https://web.archive.org/web/20240713074152/https://amphillc.thebase.in/items/88097036)


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