Arikaina 2025/10 自殺した市職員の裁判はじまる[1]
最初の通報では、市は何もしなかった

「息子が受けた恐怖を思うと、涙が止まりません」 自殺した和歌山市職員の裁判、第1回口頭弁論[1]


 和歌山市役所の職員として不正を内部告発した後、'20年に自宅で自殺した岩橋良浩(よしひろ)さん(以下良浩さん)。遺族は内部通報後の市の対応が不適切だったとして、今年6月に市を提訴。9月30日、裁判の第1回口頭弁論が開かれました。原告側は「不正行為を改めることに貢献したのに、市から守られることなく自死に追い込まれた」などと主張。被告の和歌山市側は、争う構えを示しています。


自殺した岩橋良浩さん(口頭弁論時、母親の啓子さんが持参した写真)

最初から大法廷
弁護士が意見陳述「あんまりしないんですけどね」

 9月30日、和歌山城の隣にある和歌山地方裁判所。一番大きい101号法廷の80席ある傍聴席は、開廷前にはほぼ満席となりました。13時半に開廷後、原告側の岩城穣弁護士と、岩橋さんの母である啓子さんが陳述を行いました。

 岩城弁護士によると、通常、民事訴訟の1回目は3分ぐらいで終わることが多いとのことです。「普通、弁護士はあんまり意見陳述しないんですよ。書面に書いてるから。だけどやっぱり重要な事件と言いますかね、どの事件も重要なんですけども、(中略)意見陳述することがありまして、私は3、4回目だと思うんですけれどもね(岩城弁護士)」

公益通報するも市は何もせず
2回目の公益通報で、職員15名が処分

 今年6月、良浩さんの自殺について調査していた市の公正職務審査会が意見書を公表しました。意見書によると、良浩さんは'15年に和歌山市役所に入庁。'18年5月に平井児童館に異動となり、そこで「実際は1つしか子ども会が存在しないにもかかわらず、8つ存在するものと偽って交付金の申請を行う(意見書より)」よう指示されました。子ども会には、1つにつき50万円の交付金が認められるとのことです。

 良浩さんは「自身も犯罪に加担することになると考え(同)」、精神に不調をきたしメンタルクリニックを受診。休養が必要との診断を受けました。良浩さんは、市に病気休職願を提出。その中で、平井児童館の不正を訴えました。意見書ではこれを「『公益通報』に該当する」としています。

 しかし市はこの通報を受けても、何も対応しませんでした。「しかしながら、当時、これを受け取った青少年課長らは、この内容を教育課長及び教育学習部長に報告しただけで、他に何らの対応もとっていない。また、青少年課長らから報告を受けた教育局長らは、これを放置し、何らの対応もとらなかった(同)」

 良浩さんはその後、市の公益通報外部相談員に『2回目』となる公益通報を実施。これにより市による調査が行われ、不正が明るみに。職員15名が処分を受けました。


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