|
Arikaina 2025/10 自殺した市職員の裁判はじまる[2]
|
|
最初の通報では、市は何もしなかった
|
「息子が受けた恐怖を思うと、涙が止まりません」 自殺した和歌山市職員の裁判、第1回口頭弁論[2]
通報した相手の講義を受講
通報した相手がすぐ近くの席に
良浩さんは'18年10月に復職。すると翌'19年、人権研修が未受講であるとして、市から研修の受講を命じられました。研修の講師は、良浩さんが通報した平井子ども会の会長でした。前述の意見書はこのことについて「このような事態が生じないように対応する必要があったと言うべきである」としています。
さらに'20年4月には、良浩さんの通報により処分を受けた職員の1人が、人事異動で良浩さんのすぐ近くの席になりました。意見書によると両者の間にはパーティションや間仕切りはなく、良浩さんが上司の席に行くさいには、処分を受けた職員の席に近づかざるを得ない状況だったとのことです。
この人事異動から2か月後、良浩さんは勤務中に車で物損事故を起こし、その3日後、自宅で自ら命を絶ちました(享年28歳)。
良浩さんの公益通報後、和歌山市の別の児童館につとめていた西泰伸さん(海南市在住)も、自身の児童館でも同様の不正が行われているとして公益通報しました。西さんは良浩さんの死後、昨年6月に大学教授や元県議会議員らと支援団体を結成。遺族は今年6月、損害賠償を求めて市を提訴しました。
「報復が始まったように思えたのでは」
母親が涙ながらに意見陳述
9月30日の第1回口頭弁論。岩城弁護士は陳述の中で、児童館の不正は長年に渡る市と同和団体の癒着が背景にあり、正義感に基づく公益通報が正当に評価されないとすれば、「『触らぬ神に祟り無し』と職員は違法行為を黙認し、黙り込んでしまうことになり、公益通報制度の趣旨が没却されてしまうことになる」などと述べました。
岩城弁護士に続き、良浩さんの母親の啓子さんが意見陳述を行いました。処分された職員がすぐ近くの席になったことについて触れ、「報復が始まったように思えたのでしょう。(中略)息子が受けた恐怖を思うと、涙が止まりません」などと述べました。
啓子さんはこの日、良浩さんの形見である時計を身に着けて出廷。途中からはずっと、ほぼ涙声で陳述を行っていました。
次ページ「原告側弁護士「匿名でも情報提供があれば」」
次の記事
関西のドクターヘリ、順次停止続く
|
|
←このページのコード
有田・海南のフリーペーパー
Arikaina
2025/10号
|
|