Arikaina 2022/3 IRカジノ、資金の7割が借金
議員には手紙、住民には?

IRカジノ、資金の7割が借金
「どこがお金を出すのか」いまだ不透明なまま


 マリーナシティに県が計画しているIRカジノ。4月には、いよいよ国への計画案の提出期限を迎えます。2月には県と事業者から計画案が発表されましたが、以前から課題とされていた資金調達については依然として不透明なまま。投資額の7割が借金であることもあきらかとなり、県議会の議員からは不安の声があがっています。
※記事の内容は3月7日時点のものです。

 2月に県が発表した計画案によると、投資額の実に7割が借金。投資銀行のクレディ・スイスが金融機関などからお金を集め、そこから借りることになっています。残り3割は出資金ですが、そのうちお金を出す企業が確定しているのは6割ほど。残り4割は「少数株主」として複数の会社がお金を出すことになっていますが、今のところ公表されているのは東京の西松建設(株)だけです。

 2月7日に開催された、県議会のIR特別委員会。県議会の議員からは、資金面での不安を指摘する声が相次ぎました。

「地元経済界の盛り上がりがなく、大変さびしい。やはりこの事業の資金計画等が明確にできていないからですね、そういう形になっておると私は思うんです(冨安議員)」

「この3300億円の借入の担保と言うか、確信になるものがまったく無いんですね。だからほんまに借りられるんかなあと、どうしても思わざるを得ない(玄素議員)」

「(借入の内訳を)開示できないと言うんは納得できへん。議会に開示できないと言うのは、不思議でならないんですよ(吉井議員)」

 こうした声に対し、事業者であるクレアベストニームベンチャーズ(株)(以下クレアベスト社)と県の担当者は「クレディ・スイスがこの3250億円を集めることが可能だということを確信している、そういったものが出ていると理解している」「県議会で議決する前には、資金計画の最終の姿をお見せする」などと回答。計画案は国に提出する前に県議会での議決が必要ですが、『どこがお金を出すのか』があきらかになるのは、議決の直前になりそうです。

「1月末には形にしないと、あきらめざるを得ない」だったはずが…「時間がないので認める」

 2月の特別委員会に先立つこと3か月前、昨年11月にもIR特別委員会が開催されました。この席で県の担当者は「最終の期日につきましてもですね、2月議会がありますことから、1月末にはすべて確定という形でないと、我々としてはもうこの事業はあきらめざるを得ない、というところは申しておるところでございます」と発言。委員会では計画に不透明な部分が多いとして、県民へのパブリックコメントや、説明会を延期する決定を下していました。

 しかし、結局1月末に『すべて確定』はしませんでした。2月の委員会では、この点についても議員から発言が相次ぎました。

「この前の審議で、これは1月末に決まってなかったらあきらめざるを得ませんね、というようなことを仰っていますけど、その発言と今の状態は齟齬はないんでしょうか(中議員)」

「あのー、前回の特別委員会、開催した中で、その資金調達の確実性をつまびらかにしていただかんかぎりは認められませんよと。で、それを受けて今日の委員会あるわけですから(藤山県議)」

 これに対し、クレアベスト社と県の担当者は「1月末に一定の資金計画は出てきたと評価している」などと回答。議員からは「引っぱって引っぱって、もうそのまま出したれみたいな(玄素議員)」と、少々突き放したような発言もありました。

 しかし結局、委員会は「本委員会として納得できるものではない。しかしながら国への申請日程が決まっている中で、これ以上県民への公聴会やパブリックコメントを止めることは委員会として本意ではない(委員長をつとめる藤山県議)」として、時間がないことを理由に、前回延期したパブリックコメントや説明会を開催することを了承しました。

 IRカジノの計画案は4月に県議会で議決される見込みで、承認されれば国に提出されることになります。年内には、国がIRカジノを開業できる区域を認定(国内で最大3か所)するとみられています。

委員会のメンバーに手紙?
一部の議員にだけ事前に説明?

 委員会では、クレアベスト社が委員会のメンバーに手紙を送っていたこともあきらかになりました。郵便局のレターパックで送られてきたとのことです。

 手紙のことをとり上げた秋月議員によると、手紙には同社の代表取締役の名前が記されており、『当社の対応の不備により』『当社の対応の不手際により』といったくくりがあり、『特定の議員の方との間に特別な関係があったのではないかと誤解を招き、二度と特定の議員の方等と親密な関係にあるかのような誤解を招くことのないように』などと記載されていたとのことです。

 また委員会では審議が進むうちに、一部の議員にのみ事前に県の担当者が説明に訪れ、委員会で配られたのとは別の資料を渡していたことが分かりました。これに対し、『説明を受けていなかった』議員が激怒。委員会は紛糾しました。

「(事前に説明する人としない人を)どうやって選んだんよ、それちゃんと言えよ!(浦口議員)」

「そのね、いくら説明したかてね、○○さんと○○さんしか(資料を)渡してないんでしょ。こんなん理屈に合うかよ。差つけた理由をちゃんと申し上げてくれないと、今日の委員会なんか、もうこれで終わってください(中議員)」

しかし結局、「なぜ一部の議員にだけ事前に説明し、資料を渡していたのか」について、県の担当者から明確な説明はありませんでした。

説明会は開かれたものの…
県民の意見は一方通行?

3/1、有田振興局(湯浅町)で開催された説明会。たしかに「オンライン」ではあるものの…

 委員会での決定を受け、県では2月28日〜3月6日にかけ、県内各地で説明会を開催しました。

 3月1日、19時から有田振興局で開かれた説明会。県内にまん防が発令され「不要不急の外出自粛」が呼びかけられていた中、説明会は「参加者が会場に集まって、そこでオンラインで説明する」という形式で開催されました。「オンライン」にも関わらず、自宅からの参加は不可。有田のほか、伊都・日高と結んで、3つの会場で同時に開催。この日は昼間に那賀・西牟婁・東牟婁の会場でも同様に開催されており、『1日に6つの会場で説明会を実施した』ことになります。

 説明会では県の担当者がオンラインで出席し、まず30分ほど計画案について説明。その後、3つの会場から質問を「一人一問で、再質問は受け付けない」という形で受け付けました。「時間に限りがある」として質問を簡潔にすることも求められ、質疑応答は1時間ほどで終了しました。

 県では2月9日〜3月10日まで、県民から意見をつのるパブリックコメントも実施。委員会では、県の担当者は「最終、県民の意見を入れた形のもので和歌山県議会と和歌山市議会の同意をいただく」と話していましたが、4月に国への計画案の提出期限を控えている中、県民の意見がとり入れられるとしても、それを県民が検証したり異議を唱えたりする時間は、どうやらなさそうです。

事業者・団体・企業・県で
「オール和歌山」

 2月28日、海南ノビノスで開かれた説明会では、マリーナシティにほど近い黒江・船尾地区の連合自治会の方が質問しました。「マリーナの花火大会でも渋滞する。これ以上の渋滞が毎日続くとなると、たまったもんじゃないです」これに対し県の担当者は「交差点の改良やレーンの追加で、今以上に渋滞が多くなるということは考えていない」と答えていました。国への計画案提出期限まであと2か月という時期になっても、地元住民への説明や話し合いは、あまり進んではいないようです。

 計画案の中で、県は『オール和歌山の体制づくり』と題して『IR事業者、和歌山県内の団体や企業、和歌山県の3者が協力して、IR事業者への公平公正な出資や地域での調達、協業を推進する仕組みを構築』と記載しています。県の考える『オール和歌山』には、地元住民は、どうやらふくまれてはいないようです。

参考=YouTube「2021 11 19 IR対策特別委員会 午前」(www.youtube.com/watch?v=iHIaWmha2L8&t=3625s)/YouTube「2021 11 19 IR対策特別委員会2午後」(www.youtube.com/watch?v=MnA24WyPrPQ&t=717s)/YouTube「IR対策特別委員会 午前の部」(www.youtube.com/watch?v=L3uJRufbRhQ)/YouTube「IR対策特別委員会 午後の部 前半」(www.youtube.com/watch?v=qVs0wy5R8JA)/YouTube「IR対策特別委員会 午後の部 後半」(www.youtube.com/watch?v=JYOwqpJjq_o)/YouTube「2022 02 28 1 『和歌山県統合型リゾート(IR)』説明会」(www.youtube.com/watch?v=mGv87A9hrds)/和歌山県「『和歌山県統合型リゾート(IR)』説明会の開催について」(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020100/d00209696.html)/和歌山県「『和歌山県統合型リゾート(IR)』公聴会の開催について」(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020100/d00209700.html)/和歌山県「和歌山県特定複合観光施設区域整備計画(案)に対する県民意見募集について」(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020100/d00208944.html)/和歌山県議会「委員会別名簿」(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/200100/cms/d00155208.html#IR)/西松建設株式会社「本支社・支店所在地 - 会社情報 -」(www.nishimatsu.co.jp/company/base.html)/観光庁「IR整備法に基づく基本方針の決定等について」(www.mlit.go.jp/kankocho/news03_000208.html)


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