Arikaina 2024/6 県、廃食油の回収を開始
県、有田や海南で廃食油の回収事業を開始

 県は6月、和歌山市・海南市・有田市で家庭から出る廃食油の回収事業を開始するとしました。有田市でENEOS株式会社(以下エネオス)が計画している、廃食油を原料とするSAF(以下サフ)工場を念頭に置いた事業ですが、エネオスは資金を提供せず、県の予算で実施されます。また今回の事業では、集めた廃食油を使ってのサフの製造もしないとのことです。

エネオスは資金提供せず
住民がボランティアで協力

 県の成長産業推進課によると、対象となるのは和歌山市・海南市・有田市に在住の方。県のホームページ上で協力してくれるモニターを募集しており、7月から回収をはじめるとしています。事業では各市に回収拠点をいくつか設け、専用の回収ボトルを配布。ボトルに廃食油を入れて、各家庭から持参してもらうとのことです。なおモニターとなっても謝礼などは出ず、回収拠点への持参や回収ボトルの受け取りなどは、モニターがすべてボランティアで行うことになります。

 県は事業のホームページでエネオスが計画しているサフ工場についてもふれていますが、今回の事業では、回収した廃食油でサフは製造しないとのこと。同課によると、エネオスはまだサフを製造する設備を持っていないとのことです。代わりに?集めた廃食油で、バイオディーゼルを精製するとしています。

廃食油は「売れるもの」
価格が高騰、争奪戦という話も

 サフは廃食油や生ごみなどを原料として製造する飛行機用の燃料で、従来の燃料よりエコであるとして注目を集めています。エネオスは初島の製油所跡をサフの工場とするとしており、同社のホームページによると'26年を目標に事業化するとしています。

 一方でサフの原料となることもあり、家庭から出る廃食油も「捨てるもの」でなく「売れるもの」になる可能性も。経産省は'23年に公表したサフに関する資料の中で、「廃食油は、世界的な需要増大により供給量が不足し、価格が高騰」としており(※1)、大手メディアでも近年、飲食店などから出る廃食油をめぐって「価格が高騰している」「争奪戦になっている」といった報道が相次いでいます。ただ今回県がはじめた回収事業のホームページやモニターの募集要綱では、こうしたことには一切ふれられていません。

 今までは天ぷらや揚げ物料理のあと、捨てられていた廃食油。でもこれからは、貴重な「資金源」になるかもしれません。なお県の成長産業推進課によると、回収する油にお料理のさいに出る食べ物のカスが混じっていても、小さなカスなら別に構わない(大きなカスだけとり除いておいてくれればいい)とのことです。

(※1)資源エネルギー庁「SAFの分野別投資戦略について」2023年11月(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/nenryo_seisaku/pdf/013_01_00.pdf

参考=和歌山県「家庭用使用済み天ぷら油回収実証事業」(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/063100/hitonowa.html)/日テレNEWS NNN「料理で使った後の油「廃食油」が高騰 需要増えるもコロナ禍で供給減り 卵の価格にも影響が…」(https://news.ntv.co.jp/category/economy/f867517929ad47a7923c376cdeeba893)/東京新聞「天ぷら店が「都市油田」に!? 廃食油が航空燃料になるから争奪戦 ルール求める声まで出る理由とは」(https://www.tokyo-np.co.jp/article/263604)/TBS NEWS DIG「原料は"使い終えた食用油" 家庭ごみを地域の燃料へ「油田プロジェクト」好調な滑り出し 大分」(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/517369?page=2)/読売新聞「廃食油が今や「お宝」、航空燃料活用へ争奪戦…取引価格は1年で3倍」(https://www.yomiuri.co.jp/national/20240319-OYT1T50047/)


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