Arikaina 2023/4 「財政危機警報」の衝撃
危ないのか、そうでもないのか、どっちなんか

和歌山県、「財政危機警報」の衝撃 県議からは疑問の声も[1]


 2月1日、岸本知事が突如発表した「財政危機警報」。今のままでは、県の基金(貯金)が2年後にはなくなるとしてします。県では「やりくり」として、大型事業の見直しを相次いで発表。ただ県議の中からは、この発表に疑問を呈する声も出ています。


「1年でなぜ危機になるのか」
「今現在、危機ではない」

 2月20日に開かれた、県議会の本会議。海南市・海草郡選出の藤山将材議員が、発出された財政危機警報について質問しました。藤山議員は警報に「一定の理解」は示しつつも、「仁坂前知事の時代には財政がここまで厳しいという声は聞いたことがない」「昨年発表された財政プランでは、5年後に県の貯金が150億円と示されていた」などとして、知事にあらためて財政状況について質しました。

 これに対して知事は、物価高騰などで状況が変わり、その点を反映させたと説明。「今現在、財政危機ではない」として、「財政危機に陥る前に警報を鳴らさせていただいて、みんなで協力をお願いできないか」などと答弁しました。

 本会議ではこのあとの質疑で、県が県立自然博物館の移転を見直すことがあきらかになりました。さらに昨年11月、仁坂前知事が記者会見で「2月議会で」と言っていた新しい射撃場の建設についても、2月議会で予算は付きませんでした。

海南市が造成した、県立自然博物館の移転予定地。県の方針転換で移転が不透明になったことで、造成にかかった費用(約2億円)が無駄になる可能性が出てきています。

公共事業のし過ぎで財政難に?
県の借金、これから9年でさらに150億円増加と試算

 財務省が毎月発行している広報誌「ファイナンス」。今年3月号に、県の財政課長・庄中(しょうなか)健太さんによる「和歌山県財政の現状と課題 〜財政見直し元年〜」と題した一文が掲載されました。庄中さんは元財務官僚で、昨年から県に出向しています。

 庄中さんはその中で、昨年策定したプランでは令和8年度に県の貯金を150億円程度維持するとしていたが、その後の物価や金利の上昇をふまえて再計算したところ、2年後には貯金が底を尽くと説明しています。ただその再計算の中身については、国の試算を元に「機械的に推計した」となっており、計算に関わる具体的な数字は示されていません。

 庄中さんは文中で財政悪化の原因として、県の借金とその返済についてくわしく説明しています。県では近年、公共事業を積極的に推進してきたことにより借金(県債残高)が積み上がった状態になっており、今回の試算では、これから9年でさらに150億円ほど借金がふくらむとしています。これにともない、毎年の借金返済(県債償還)の額が激増し、10年で2倍ほどになるとしています。

 庄中さんは公共事業については、県民の利便性を高めるとしながらも「野放図に事業量を拡大すれば、(借金の返済に必要な)公債費負担に財源を割かれ、必要な政策を実行することができなくなります」としています。


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