Arikaina 2020/3 風評被害を研究 初鹿野浩明さん
風評被害を長年研究 経営コンサルタントの初鹿野浩明さん

 2月13日、済生会有田病院で、県内ではじめてとなる新型コロナウイルスの感染者が確認されました。

すると時を経ずして、病院のある湯浅町で「ふるさと納税の返礼品をキャンセルされる」「観光客のキャンセル」といった状況が起こりました。

こういう時、事業者・経営者はどう考えるべきなのか?風評被害にくわしい、経営コンサルタントの初鹿野浩明さんにお話をうかがいました。

数か月で5割、2〜3年で8割まで回復する

 初鹿野(はつかの)さんは茨城県在住で、経営コンサルタントの仕事のかたわら、風評被害について長年研究。

過去には東日本大震災をはじめ、長崎県の雲仙普賢岳やBSE問題などの風評被害について調査・研究し、各地で講演もされています。

 初鹿野さんは、風評被害を「デマを含め、ネガティブな情報をマスコミなどが大きく報道することによって、一般市民の趣向が変化したことによって生じる被害」と定義された上で、

「過去の例からみますと、マスコミの報道がおさまれば数か月で5割程度は回復すると思います。2〜3年で8割ほどには回復していきます。ただ今回は全国規模で起こっていることですので、代替品移動が少なく、もっと少ない期間で回復するのではないかと考えています」

まずは身を守り、新たな取り組みを

 経営者や事業者がまず考えるべきこととして、初鹿野さんは「災害が継続して続いている場合は、逆らわないで自分の身(お店)を守る」ことが大切だと言います。

「今洪水が起きているのに、洪水をせき止めようとしないことです」

初鹿野さんは自分の身を守るための具体的な方法として、

▽お金を使わない

▽従業員には一旦休んでもらうといった、事業の一時的な縮小をはかる(編注・雇用調整助成金についてはハローワークで相談できます)

▽借入がある場合は、できれば金融機関に返済緩和の交渉を行う。ただし、条件変更にはリスクもある。

といったことを挙げられています。

 そしてマスコミ報道がおさまってから、新たな取り組みをはじめるべきだとされています。

「業種にもよりますが、完全に回復するのは難しい場合もあります。下がった分を埋めるために、新たな商品やサービス、販売方法や生産方法を考えていくことが重要です」

「茨城県には『ほし芋』という商品があります。生の芋ですと1キロたり100円程度ですが、蒸して、干すことで2000〜4000円になります。原発事故の際には茨城のお茶農家が、お茶煎餅やお茶うどん、抹茶タルトなどをOEMで作りました」

キャンセルの一方で、「がんばれ」の声

 湯浅町では町内の風評被害について調査をはじめていますが、担当者は「まだ戻ってはいないという感覚(3月2日時点)」と話しています。

はじめて感染が確認された13日の翌日から2週間で、町には、ふるさと納税について約100件の問い合わせがあったそうです。

問い合わせのうち4割は「返礼品を送らないでほしい」というもの。

さらに4割は「(受けとって大丈夫かなど)心配している」というものでした。

しかし残りの2割は「がんばってください」という、激励のものだったとのことです。
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