Arikaina 2020/6 カジノ公募も「Only two」
「非常事態の中で公募を実施することの無意味さが露呈している」
マリーナシティのIRカジノ 事業者公募するも、参加は「Only two」

 5月15日に発表された、マリーナシティに計画されているIRカジノの事業者公募の結果。

以前からさまざまな事業者が名乗りを上げていたものの、フタを開けてみれば、応募したのはわずか2社にとどまりました。

マリーナシティのわかやま館から、ポルトヨーロッパ方面をのぞむ

 「書類を提出した企業は2社にとどまった(ggrasia.com)」「和歌山県のIRキャンペーンは(中略)2頭立ての競争になっている(gambling
compliance.com)」

 15日に発表された事業者は、中国のサンシティ社(Suncity Holdings)と、カナダのクレアベスト社(Clairvest Neem Ventures)の2社のみ。

IRやカジノ業界の動向を伝える海外のニュースサイトでは、応募が2社に止まったことを否定的なニュアンスで伝える記事が目立ちました。

ジャン・レノさんも来和
様々な企業が関心を示していたが…


 昨年8月、和歌山県が開催した「統合型リゾート(IR)シンポジウム」。

この時はフランスのバリエール社(Groupe Lucien Barrire)/フィリピンのブルームベリー社(Bloomberry Resorts Corp)/中国のサンシティ社が和歌山を訪れ、マリーナシティのIRカジノにかける意気込みを語っていました。

特にバリエール社は、昨年5月にも著名なフランス人俳優ジャン・レノさんが和歌山を訪れて同社をアピールするなど、並々ならぬ意欲を見せていました。

 しかし結局、この時の参加企業で応募したのは中国のサンシティ社のみでした。

バリエール社はマカオのIR・カジノ関連のニュースサイト・AGB(Asia Gaming BRIEF)の取材に対し、「パンデミック時に人と会うことすらできなかったことが(撤退の)理由だ」と答えています(*1、カッコ内本紙)。

AGBは同じ記事の中で、応募が2社に止まったことについて「世界的なパンデミックという非常事態の中で、公募を実施しようとすることの無意味さが露呈している」と論評しています。

クレアベスト社、当初は北海道に関心
中国のサンシティ社がリードか


 一方、昨年のシンポジウムには参加していなかったにも関わらず、今回応募したクレアベスト社。

同社は和歌山と同じくIRカジノ誘致を目指していた北海道・苫小牧市に事務所をかまえていました。

しかし昨年11月、北海道は誘致を断念しています。

 クレアベスト社は投資会社で、先のAGPの記事では同社の立ち位置を「(アメフトの)クォーターバック(司令塔)」と表現し、「クレアベスト社は自らが事業者になるわけではない(中略)同社はパートナーとなる企業を明らかにしていないが、その企業は新型コロナウイルスによる緊急事態のため申請を行うことができなかった」と伝えています。

 かたや昨年のシンポジウム参加企業の中で、唯一応募した中国のサンシティ社。

同社はすでにホームページで、マリーナシティでの計画をくわしく紹介しています。

それによると最上階にスカイラウンジのあるホテル(2600室)/カジノ/レストラン/温泉/スパ/コンサートや結婚式を開催できるコンベンションホール/などをマリーナシティに建設。

また今年4月には、有田川町の福祉施設に軽トラック3台を寄贈したと発表しています。

 現時点では、具体的な計画を発表しているサンシティ社の方がリードしていると言えそうです。

同社のアルヴィン・チャウCEOは、マカオのメディア「Inside Asian Gaming」の取材に対し、「(日本でIRカジノが開業するのは)横浜、大阪、和歌山の3か所になると予想している」と話しています(*2、カッコ内本紙)。

 県のIR推進室によると、今回応募した2社は10月19日までに提案審査書類を提出。

来年1月頃には
IR事業予定者(優先権者)を選定するとしています。

同室では国によるIR候補地の認定(国内3か所)は、来年の秋〜冬ごろになると予想しています。

「わかやま館」は閉館
建物はとり壊しへ


 マリーナシティのIRカジノ予定地は、県がいったん約77億円で購入。

その後、国のIR候補地として認定された場合は、県から事業者に売却。

認定されなかった場合は、もとの所有者に戻されることになっています。

予定地に含まれている「わかやま館」では、6月5日、来年3月での閉館を発表しました。

 「わかやま館」は'94年、世界リゾート博開催時にオープン。

内部にはドームシアターをそなえており、リゾート博当時は「水と大地のうた〜紀の国〜」を上映。

リゾート博終了後も宇宙や恐竜をテーマにしたものなど、さまざまな映像作品を上映してきました。

現在は恒常的な上映は行われていないものの、昨年も10月にオーロラ映像の上映会&トークライブが開催されています。

 「わかやま館」はドームシアターのほかにも複数の会議室やサロンをそなえており、こちらは現在も貸し出しが行われています。

県商工観光労働総務課によると閉館後はIRカジノの成否にかかわらず、建物もとり壊される予定とのことです。

参考
*1 AGB Nippon「Wakayama Illustrates Need for IR Bid Delay」
(agbnippon.com/headline/44213)
*2 IAG「IR2.0」
(www.asgam.com/index.php/2020/05/19/ir2-0/)
GGRAsia「Suncity, Clairvest the two bidders in Wakayama's RFP」
(www.ggrasia.com/suncity-clairvest-the-two-bidders-in-wakayamas-rfp)
GamblingCompliance「Suncity, Clairvest All That Remain In Wakayama IR Race」
(gamblingcompliance.com/premium-content/insights_analysis/suncity-clairvest-all-remain-wakayama-ir-race)
和歌山県「統合型リゾート(IR)シンポジウムを開催しました」
(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020100/ir/d00202259.html)
和歌山県「『和歌山県特定複合観光施設設置運営事業実施方針(案)』についての和歌山市及び和歌山県公安委員会との協議について」
(wave.pref.wakayama.lg.jp/news/kensei/shiryo.php?sid=30799)
「県民の友」'94年7月号
わかやま館ホームページ
(www.taiyo-kogyo.cc/wakayamakan)
和歌山県財政課「令和元年度12月補正予算の概要」
(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/200100/cms/d00202850_d/fil/R1-12hoseiyosangaiyou.pdf)
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