希少なカニのすみか、半分が土嚢の下に 「ワカウラツボ」にも影響か 工事が行われているのは、和歌浦に浮かぶ島・「妹背山(いもせやま)」周辺の工事。県により、妹背山へと続く橋である「三断橋(さんだんきょう)」の補修工事と、妹背山内の建物「観海閣(かんかいかく)」の建て替え工事が行わています。 和歌山大学教授で、「カニ博士」との異名もある古賀庸憲教授によると、観海閣の工事にともない周辺の干潟に土嚢が積まれており、ハクセンシオマネキなど、希少なカニの生息地がかなり脅かされているとのこと。 「(重要湿地である干潟の)上にどかっと土嚢が積まれており、ハクセンシオマネキのいた地域の半分くらいが埋まってしまっています。事前に相談してもらえれば、桟橋にするなど、干潟への影響の少ない工法も提案できたんですが…(古賀さん)」 同教授によると、和歌浦で発見されその名がついた巻貝「ワカウラツボ」への影響も懸念されるとのこと。ワカウラツボは、県のレッドデータブックでもっとも絶滅が危惧される「絶滅危惧1類」に指定されています。 繰り返される重要湿地での工事 県では指摘を受け「土嚢にパイプを通すなどして水通しをよくすることを検討している(県都市政策課)」としています。県の工事では3月にも、日高川河口の重要湿地に工事用の橋がかかり、指摘を受けて工事が一旦ストップするという事態が発生しています。 立て続けに似たような事態が繰り返されたことに対して、県では「落ち度があるので、今後そういうことがないよう、体制を整えていくことを考えている(県自然環境室)」と話しています。 具体的には重要湿地をふくめ、環境的に重要な地域では専門家の助言をもらうような制度を準備しているとのことです。 妹背山周辺の施設は、紀州徳川家の初代藩主・徳川頼宣(よりのぶ)が整備したもの。もともとは木造でしたが、昭和36年の台風により被害を受け、コンクリートで再建されました。現在その建物をとり壊し、ふたたび木造で再建する工事が進められています。
参考=「和歌の浦の妹背山を巡る史料」西本直子、西本真一 '18年武蔵野大学環境研究所紀要 前の記事 [3]東京オリ・パラ 合宿最終確認
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