Arikaina 2021/11 有田地方、産科医確保へ努力続く
妊婦さんを支援する動きも

来年から「お産ができなくなる」有田地方、産科医の確保へ努力続く

 分娩(お産)のできる医療機関が、1か所のみとなっている有田地方(有田郡市)。年内でその医療機関も分娩を中止することになり、来年からは有田地方でお産ができなくなります。行政では産科医確保のための努力が続いているものの、難航している状況です。

「大変なこと」「危機的な状況」
「2人目、3人目は近場で」

「一生懸命、あきらめんとやっていきたい。近くで産めなくなるのは大変なこと(有田川町の中山正隆町長)」「危機的な状況という声も出ている(広川町保健福祉班)」「問題意識や危機感は(有田の)1市3町で共有しており、協力していきたい(湯浅町健康推進課)」

 有田川町の中山町長は、9月の町議会で危機感をあらわにしました。議会での答弁によると、副町長を中心に産科医の確保に向けて動いているものの、難航しているとのことです。同町長は答弁の中で、有田郡市の1市3町の市長・町長の連名で、県選出の国会議員に産科医確保の要望を出すとしています。

町議会でこの問題をとりあげた堀江眞智子議員は、質問の中で「1人目はまだしも、2人目・3人目の出産のときは、子どもをみながらの出産になる。近場で産めることが重要であり、しっかり対応してほしい」と述べていました。

病院では、複数の産科医が必要に…
有田川町長「公的病院では不可能」

 有田地方の中核病院である有田市立病院では、2年前までは産科医が1人在籍してお産をあつかっていました。しかし、昨年1月でお産のとりあつかいを中止。厚労省が進めている「医師の働き方改革」により、これからお産を再開するには複数の産科医を確保する必要があるとみられています。前述の中山町長も同じ議会の中で「公的病院でやるのは不可能」と述べています。

 有田市健康課によると、市立病院を中心に産科医招聘にとりくんでいるとのことですが、同病院は今年から国の支援を受け、民間が管理する指定管理制度への移行を見据えて準備が進められています。関係者の話を総合すると、お産の再開には産科医個人によるクリニックや、個人医院の開業による再開の方が現実的なようです。

 有田地方でのお産再開を目指して署名活動などを行っている「有田地域の医療の充実を求める会」では、「全国的に産科医が不足しており、根本的には、産科医が増えないと問題の解決は難しいと感じています。今後は国への要望といった運動も考えています(同会の山口さん)」と話しています。

「救急時の妊婦さんの支援を」
有田市消防が勉強会

有田市消防での勉強会の様子
(翠助産院のインスタグラムより)

 こうした状況の中、お産を支援する活動も。今年5月には有田市内に、産前産後のケアなどを行う「翠(みどり)助産院」がオープン。10月には有田市の消防で、同助産院による勉強会が開催されました。

 これはお産ができる医療機関がなくなることでお産の救急が増える可能性があるとして開催されたもので、分娩の介助などについて講習が行われました。「年配の方には妊婦さんの救急を経験していた方もいらっしゃっいましたが、ほとんどの方は未経験。みなさん、とても熱心に受講されていました(翠助産院の宮﨑翠さん)」

和歌山市には来春、新しい助産学専攻科が

 また'18年に和歌山市に看護学部をオープンした東京医療保健大学では、来春、新たに「和歌山助産学専攻科」を和歌山市に設置。現在、個別相談会を受けつけています。
 対象となるのは4年生大学を卒業し、看護師資格をお持ちの方。カリキュラムは1年間で、和歌山市内の病院や助産所を中心に実習を行うとしています。

 県内ではほかに県立医科大学と県立高等看護学院に助産学のコースがありますが、県立高等看護学院の助産学科は23年度でなくなることが決まっています。東京医療保健大学では「本学の卒業生は、8割が地元で就職しています。県立高等看護学院の助産学科がなくなることもあり、和歌山看護学部の一期生が卒業するタイミングで助産学専攻科の構想が実現しました」と話しています。

東京医療保健大学和歌山助産学専攻科ホームページ(個別相談会もこちらから申し込むことができます)=トップページ(wakayama.thcu.ac.jp)から、「和歌山助産学専攻科」のバナーをクリック

参考=有田川町議会 令和3年9月定例会(第2日9月9日)(www.kensakusystem.jp/aridagawa-vod/cgi-bin4/GetHTML.exe?uiknwnpvvgr5uidt4a/R030909TEIREI.html/0/10/1/0/0#hit1)/東京医療保健大学「建学の精神・沿革」(www.thcu.ac.jp/about/idea.html)

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