Arikaina 2021/12 IRカジノ、超過密日程に
参加する企業も、出資する金融機関もまだ未定?
IRカジノ、事業の遅れで超過密日程に 県民にほとんど説明ないまま、決議に突入か

 マリーナシティで計画が進められているIRカジノ。6月には事業を実施する会社として、カナダに本社を置くクレアベストグループ(以下クレアベスト社)」が選ばれ、県といっしょに事業を進めてきました。

しかし11月になっても、事業に参加する企業や、4千億円を超えるとされる資金をどこが出資するのかは不明のまま。このままでは県民にはほとんど説明がないまま、議会で決議が行われることになりそうです。

11月19日、県庁で開催された特別委員会。県やクレアベスト社の担当者が出席し、事業の進捗について説明しました。

IRカジノ計画の進捗状況

最近の流れ

6/3
県がクレアベスト社を事業者に選定
10/8
県議会がIR対策特別委員会を開催
11/19
県議会が再度、IR対策特別委員会を開催
11月〜12月
県が説明会・パブコメを予定するも、中止に

これからの予定

1月末
クレアベスト社が整備計画を公表(予定)
1月末〜2月
かけ足で県民への説明会・パブコメを実施?
2月
県議会と和歌山市議会で、整備計画について議決(予定)
4月
国への区域整備計画の認定申請の期限
時期未定
国が実施区域を認定(全国で最大3か所)。カジノ免許の申請・付与を経て、IRカジノ開業

「こんなもんでええんかな」
「はっきり言うておかしい」

「(資金確保のために)日本の金融機関3行、アメリカの金融機関2か所と話は進んでいる。(中略)企業名を出せば、みなさん安心していただけると思う」

「(参加する企業について)一部接触している事業体はあり、まったくメドがついていないわけではない」

「訪問した企業については、ここで社名はつまびらかにはできない」

 11月19日、県庁で開催された「IR対策特別委員会」。クレアベスト社と県の担当者が事業の進捗状況について説明しましたが、「公表できない」「開示できない」といった説明が相次ぎました。

 これに対し委員会のメンバーである県議会議員(県議)からは、厳しい声が相次ぎました。

「こんなもんでええんかな、と正直感じた(玄素県議)」

「情報が少なく、賛成と言えない。はっきり言うておかしいと思う(浦口県議)」

「県の人があんまり、収入のこと言うてくれない。(中略)後回しにするというのは、お気持ちとして何かあるんですか(中県議)」

 県議からは、資料(IRカジノ計画の原案)が届いたのは、委員会の前日だったとの発言もありました。「間際に出してきて賛否をとるというのは、紳士的じゃない。議員にたいして失礼(浦口県議)」

 当初はこの委員会のあと11月〜12月にかけて、県内の各地で説明会や、県民に意見を聞くパブリックコメント(パブコメ)が実施される予定でした。しかし委員会では、「県民にすべてをあかすことができない状態で、(中略)意見を聞いても、反映する時間があまりにも無いような気がする。納得してもらえないのではと思う(玉木県議)」といった意見が相次ぎ、説明会やパブコメは延期されることになりました。

「出資したら工事受注できる」県内で噂に?

 委員会では林県議から「県内で、(IRカジノに)出資したら工事を受注できる」といった噂が出ている、と指摘がありました。「知り合い関係で、出資・投資してもらったら事業に参加できるとか、工事受注できるとか、噂が出ている。本人から聞いている話もある。もし(クレアベスト社の)関係者がそういう話をしているのであれば、差し控えていただきたい(林県議)」

 これに対しクレアベスト社の担当者は「そういう行動は僕はものすごく嫌い。(中略)もしあればいつでもご指摘ください。私の方で責任を持って調べてご回答します」と答えていました。後日、本紙が林県議に確認したところ、複数の事業者からそういった話を聞いているとのことです。

 こうした噂については、9月の県議会でも吉井県議が「仕事が欲しければ資金を提供しろと、平たく言えば、そういうことを語っていると聞くわけなんです」と発言しています。

計画が出るのは1月末→2月に議決
県民に説明してるヒマはない?

 IRカジノは開業に際して国への申請が必要になっており、申請の期限は来年4月となっています。申請前には県議会と和歌山市議会での議決を経ることになっており、どちらの議会でも、2月に議決が行われる見通しになっています。

 しかし11月の委員会では、県の担当者は「どんどん計画自体は作って行きますが、最終的に確定する形になるのは、1月末を目指している」と説明。このまま進めば1月末に最終的な計画が示され、2月には議決されることになります。県民への説明や、パブコメなどで県民から意見を聞いてそれを計画に反映させるといった時間は、ほとんどないことになりそうです。

 県IR推進室によると、2月までに委員会を行うかはまだ未定とのこと。議決された場合は、基本的にはその後は整備計画は変更できなくなるとのことです。

ポルトヨーロッパは公園に?
雇用は「県外からを優先」

 委員会で報告された原案の中身によると、IRカジノは「自然とテクノロジーの融合」をコンセプトに、カジノのほか最大6千人収容の大ホールを備えた国際会議場・ホテル・バー・レストランなどを設置。入場者数は年間で約1300万人(1日あたり約3万6千人)、開業から最初の6年間で600億円の入場料収入を見込んでいるとしています。

 現在のマリーナシティの施設に関しては、ポルトヨーロッパはIR区域内であり、公園になる予定とのこと。黒潮市場は区域外となっており、存続する見込みとなっています。

 またIRカジノ関連で約6千人の雇用を見込んでいるものの、委員会でクレアベスト社は「Iターン・Uターン(の人)からスタートし、最後に地域の方々(を雇用する)」と、県外からの雇用を優先する方針を示していました。

※11月19日の委員会の模様は、「和歌山カジノに反対する海南の会」の方がビデオ収録し、ユーチューブで公開しています。ユーチューブ(youtube.com)で、「和歌山県特定複合観光施設 区域整備計画(原案)の説明」で検索。 YouTube「2021 11 19 IR対策特別委員会 午前」
https://www.youtube.com/watch?v=iHIaWmha2L8
YouTube「2021 11 19 IR対策特別委員会2午後」
https://www.youtube.com/watch?v=MnA24WyPrPQ

参考=和歌山県議会「令和3年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(www.pref.wakayama.lg.jp/gijiroku/d00208921.html#r03_09gikai_05gou_03)/和歌山県「『和歌山県特定複合観光施設設置運営事業』の事業者公募における優先権者候補の選定について(wave.pref.wakayama.lg.jp/news/kensei/shiryo.php?sid=33302)/和歌山県「IR対策特別委員会の開催について」(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/200100/cms/d00000000_d/fil/IR211008.pdf)/観光庁「特定複合観光施設区域整備計画審査委員会の設置について」(www.mlit.go.jp/kankocho/news03_000211.html)

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2021/12号
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