江戸時代の安政南海地震のさい、稲むら(わらの束、当時は大変な貴重品)に火をつけ、津波から逃げる村人を誘導した「稲むらの火」の故事で知られる廣村(現在の広川町)の濱口梧陵(ごりょう)。昨年11月に梧陵の功績について考えるシンポジウムが和歌山市で開催され、その模様を収めた映像が期間限定で公開されています。 シンポジウムは「現在(いま)に生きる梧陵の精神」というタイトルで、昨年11月5日に県民文化会館で開催。当日は防災研究で知られる関西大学教授の河田惠昭さんと、女優で作家としても活動する中江有里さんが講演。中江さんは小泉八雲の小説を通じて関心を持ち、広川町の梧陵ゆかりの地をたずねたことを写真付きで紹介。津波のあとも、梧陵が自らの財産をはたいて地元の人たちを支えたことなどを紹介しました。 逃げなかったために多くの人が犠牲に続いて登壇した河田さんは、濱口梧陵を「野口英世や新渡戸稲造にも匹敵する歴史上の英雄」と紹介。その業績を紹介しつつ、津波が来たときの避難の重要性について力説しました。 「東日本大震災ではいちばん早く津波が来た岩手県でも、来るまでには30分あった。しかし『仕事があるから』『防潮堤がある』『津波警報は当たらない』といった理由で逃げなかった人が多かったため、大勢の方が亡くなった。津波は自然現象だが、避難しないというのは社会現象。自分勝手な理由で逃げない人が多くなれば、津波の被害は無くならない。ぜひ、逃げてください」 次の南海地震は立っていられない大きな揺れと、25分ごとの津波河田さんは、ふたたび南海・東南海地震が来た場合の想定についてもくわしく語っています。「マグニチュード8ですと和歌山県は全域で震度6弱以上となり、1分間以上揺れます。9だと3分。はいつくばらないと立っていられない揺れです。大きな津波は6時間継続し、最初は50分ごとに大きな津波が来て、そのうち四国で反射した津波が25分ごとに和歌山に来ます。こういうことを知らないと、命を失うことになるんです」 映像はユーチューブで5月末まで公開。日本語版に加え、英語版も用意されています。また日本語版のみですが、希望者には郵送によるDVDの貸し出しも受け付けています。
▽公開サイト=ユーチューブ(youtube.com)で「濱口梧陵偉業顕彰シンポジウム」で検索
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