Arikaina 2022/8 第6波で救急医療崩壊
県内でも1月にすでに深刻な事態が

第6波で「救急医療の崩壊を目の当たりにした」 日赤和歌山医療センター医師が報告


 7月には県内の1日あたりの感染者数が千名を超え、猛威をふるっているコロナの第7波。

しかしこれに先立つ1月からの第6波で、すでに救急医療体制に大きな影響が出ていたと、日本赤十字社和歌山医療センター(以下日赤病院)の医師が報告しています。

※記事の内容は8月3日時点のものです。
日赤和歌山医療センター(和歌山市)

 報告したのは日赤病院の院長補佐で、高度救命救急センター長の中大輔さん。7月、日赤病院が発行する「医療連携だより」の中で「コロナ医療と救急医療」と題して報告しました。

報告の中で、中さんは第6波を「想像を絶する勢いで感染が拡大した」として「今まで経験したことがなかった『救急医療の崩壊』を目の当たりにする事態に陥りました」と記しています(以下、カッコ内は中さんの報告より)。

重症者が集中し、数時間、三次救急を受けられない事態に

患者さんが救急車内で長時間過ごさなければならないケースも多発

 救急医療は重症度により3段階に分かれており、もっとも症状の重い三次救急の患者を受け入れる病院は、県内では日赤病院・医大病院・南和歌山医療センターの3か所です。中さんは報告の中で、第6波ではこの三次救急に大きな影響が出たことを記しています。

「時間外、特に夜間に中等症以上のコロナ患者さんを受け入れる医療機関は少なく、多くの患者さんが当センター救急外来に搬入されてきました。その中には意識状態や呼吸不全が重篤であり、いわゆる三次救急レベルの患者さんも多数存在していました」

 2月のある日には重篤な患者さんが集中し、三次救急を受けられない時間帯が生じたとのことです。

「5名の陽性患者さんをICU(編注・集中治療室)で管理しなければならない事態となりました。(中略)コロナ患者さんの場合、患者さん1人に1.5人のナース(通常の3倍)が必要となります。その結果、この日はICUに一般の重症患者さんを受け入れることが不可能となり、わずか数時間でしたが三次救急(ホットライン)に対応できない時間帯ができてしまいました。本センターに勤務して20年、小生にとっても初めての体験でした」

 重症者だけでなく、軽症・中等症の患者さんについても大きな影響が出ていたとのことです。

「救急要請したものの受け入れ医療機関がなかなか決まらず、救急車内で長時間過ごさなければならない事態も多発しました」

 中さんは「救急症例の受け入れを制限せずに済むように、救急外来、救急病棟、集中治療室の体制強化を図っています」として、報告をしめくくっています。

第7波で「普段の救急医療を維持することすら困難な状態にある」

症状が軽い場合は、すぐに救急車を呼ぶのではなくお近くのクリニックを

 第6波よりさらに感染が拡大している現在の第7波。現在の救急医療の状態について、中さんは次のように話しています。

「第7波は、第6波とは比べものにならないほど多くの陽性患者さんが出たことで、救急外来を受診する患者さんに占めるコロナ陽性患者さんの割合が、非常に高くなっています。

同時に、発熱患者さんやコロナ陽性患者さんが救急要請する頻度も増えているため、受け入れ医療機関がなかなか決まらず、救急車が一人の患者さんに占有される時間が非常に長くなっています」

「今後、このような状況がさらに悪化すれば、救急要請の際に救急車が到着するまでの時間が長くなることは容易に想像できます。このことを防ぐには、救急要請の回数を少しでも減らすことが大切です。皆さんには、症状が軽い場合はすぐに救急車を呼ぶのではなく、お近くのクリニックを受診していただくようにお願いします」

「また、第7波では幼児や学生中心に多くの陽性患者さんが出たことで、家庭内感染が数多く見受けられます。当医療センターでも出勤停止の職員が多くなり、普段の救急医療を維持することすら困難な状態になっています。学校でのクラブ活動や夏休み期間のさまざまなイベントに参加する際は、これまで以上の感染防御に努めて下さい」

※「医療連携だより」は日赤病院のホームページにて、全文を読むことができます。同病院のトップページ(www.wakayama-med.jrc.or.jp)から、中段「お知らせ」内の「医療関係の方へ「医療連携だより」No.82(夏号)を掲載しました」をクリック

参考=日本赤十字社 和歌山医療センター「医療連携だより No.82」/和歌山県「第2回医療観光研究会 資料2」(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/062400/d00155901.html)/ 和歌山県「県民の友 2012年5月号」(www.pref.wakayama.lg.jp/bcms/prefg/000200/kenmin/web/201205/tokusyu02.html)


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