Arikaina 2023/3 自然博物館の移転が白紙に
いよいよというところで"ちゃぶ台返し"?

県立自然博物館の移転が白紙に 海南市、約2億円がパーの危機


 海南市が進めている、大池周辺の整備計画。市ではここに県立自然博物館が移転するとしていましたが、2月の県議会で、岸本知事が地元の議員に「ゼロベースで見直す」と説明していたことが分かりました。海南市ではすでに約2億円をかけて同博物館用の土地を整備しており、もし移転が実現しなければ、かけた予算が”パー“になりかねない事態となっています。
※記事の内容は3月6日時点のものです。


大池の東側から、造成されたあたりをのぞむ
現在の県立自然博物館

40年間、大規模な改修なし
スペース不足で更衣室まで保管庫に

 県立自然博物館のホームページによると、同館は1982年、温山荘にほど近い海南市船尾にオープン。水族館を併設しており、毎年約10万人が訪れる人気施設となっています。学校などの遠足の定番コースとしてもおなじみです。

 しかしオープンから40年あまりが経過し、「大規模な改修は行われておらず、施設・設備の老朽化も著しい(令和元年度「自然博物館の運営状況に対する評価書」より、当時の館長)」という状態です。さらに、貴重な標本や文献などを収蔵するスペースの不足も深刻になっています。「職員のロッカーも保管物に囲まれていて、もはや更衣室なのか保管庫なのかわかりません('17年2月の県議会一般質問、藤山将材議員)」

 このため県では'17年に策定した長期総合計画の中で、自然博物館を移転する方針を決定。移転する場所については、同じ'17年の県議会で当時の仁坂吉伸知事は「(博物館を)これまで大切に育ててくれた海南市の意向も尊重した上で決定を」と発言していました。

海南市「移転する」
県「基本構想の段階」

 その後、海南市では'19年4月から市内各地で開催した市政懇談会で配布した資料の中に、県立自然博物館の移転を記載。場所は市役所からもほど近いわんぱく公園南側の大池のほとりとされ、その北側には新たに(仮称)中央防災公園を整備するとしていました。

 翌'20年6月の市議会では中家悦生議員が「(海南市の)当局からは、和歌山県立自然博物館の移転予定地と隣接させて整備することで(中央防災公園との)相乗効果が期待され、にぎわいも高まることが考えられる旨の説明を受けております」と発言。

同じ議会の中では神出政巳市長も「我々もわんぱく公園のところへ、その県立自然博物館の用地を用意しなければならない」と発言しています。少なくとも'20年の時点で、海南市の側では県立自然博物館が大池付近に移転することは『既成事実』のようになっていたようです。

 海南市は'21年に、大池周辺の土地を整備する造成工事の入札を実施。自然博物館の移転に向け、着々と準備を進めていました。しかし博物館を建設・運営する県の方では、'21年3月の本紙の取材に対しても、移転について「海南市からそういう要望をいただいており、県としても予算をつけるべくしているが、基本構想の段階(県自然環境室)」と、まだ正式な決定ではないとしていました。

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