Arikaina 2023/6 「罹災証明書」受付スタート
納得いかなければもう1回?

「罹災証明書」各自治体で受付スタート


 災害が発生したさい、住家の被害を自治体(市や町)が証明する「罹災証明書」。今回の大雨でも、各市や町ではすでに申請の受け付けを開始しています。ただし発行については、自治体によりかなりばらつきが出ているようです。

※記事の内容は6月7日時点のものです。


「火災保険」や「火災共済」には、
水害の補償もふくまれている場合が多い

 「罹災証明書」はその名の通り、住家の全壊・半壊など、被災の状況を自治体が証明する書類です。市販されている多くの火災保険や火災共済では、今回の大雨のような水害についての補償がふくまれており、保険金や共済金を受けとるさいには、罹災証明書が必要になる場合があります。

 内閣府の資料によると罹災証明書は保険だけでなく、義援金の給付など被災者へのさまざまな支援を適用するさいの判断材料として広く活用されているとしており、そうした支援を受けるさいにも必要となる可能性があります。

 有田・海南の各市・町でも、罹災証明書の申請受付がはじまっています。ただし本紙が確認したところ、いつ発行されるかは自治体によってばらつきがありました。

 有田市では、すでに市による調査が行われている家であれば申請時にすぐ発行してくれるとのこと。湯浅町では申請があってから個別に調査を行い、半月〜1か月ほどで郵送するとしています。広川町では長くて1週間程度。有田川町でも、被害の程度によってはすぐ発行されるとのことです。しかし被害がもっとも大きかった海南市では、後日郵送する形にはなるものの、いつになるかはまだはっきりしていないとしていました。

全壊か半壊か、半壊かそうでないのか
判定に納得いかなければ再調査も

 災害にともなう保険や見舞金では、全壊か半壊かといった被害の状況によって受けとれる金額が大きく変わる場合があります。たとえば海南市の災害見舞金では、全壊なら5万円が支給されますが、半壊なら3万円。火災保険や火災共済の場合は、数百万円もの違いになることもあります。

 ただし内閣府の資料によると、全壊か半壊か・半壊かそうでないのかといった判定は、「住家の部位ごとに損害割合を算出して合計する」という複雑な計算によって求められています。たとえば木造・プレハブの家であれば屋根は15%・床は10%といった具合に部位ごとの構成割合が定められており、さらに各部位がどの程度損傷しているかを判定し、その損害の程度に構成割合をかけたものを家全体で合計し、それによって全壊や半壊などを判定するーーという、非常に複雑な仕組みによって決められることになっています。

 こうしたこともあってか、近年の災害では一度出た判定に納得がいかず、市町村に再調査を求めるケースが多いと言われています。'16年の熊本地震では、実に6千件を超す再調査の依頼があったと毎日新聞が報道。'17年の九州豪雨では、福岡県の朝倉市で87件の再調査を行ったところ、うち6割が最初の調査より重い判定になったと西日本新聞が報道しています。中には、半壊から全壊になった例もあったとのことです。

 今回の取材でも各市・町の担当者は再調査について「可能だと思う(有田川町)」「(再調査は)ありえます(湯浅町)」「1回目の調査と齟齬があると認められた場合は、再調査も(有田市)」などと話していました。いったん調査してもらっても住家の被害判定に納得がいかなければ、罹災証明書を受けとる前に不服を申し立てるべき、なのかもしれません。

参考=内閣府「罹災証明書」(https://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r203shoumei.pdf)/和歌山県民共済「新型火災共済:保障内容 風水害等の場合」(https://www.wakayama-kyosai.or.jp/product/fire/security02.html)/内閣府「災害に係る住家の被害認定の概要」(https://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r305sonsho_0.pdf)/法テラス「46号 災害と法律」(https://www.houterasu.or.jp/houterasu_gaiyou/kouhou/kankoubutsu/kouhoushi_backnumber/46saigai.html)/毎日新聞「熊本地震:不服申し立て6000件超す 罹災証明書巡り」(https://mainichi.jp/articles/20160528/k00/00e/040/228000c)/西日本新聞me「2次調査で重く判定6割 朝倉市の豪雨家屋被害 市『諦めず相談を』」(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/395295/)


次の記事
環境センターで設備が故障

前の記事
今後、どのような支援が?


←このページのコード

有田・海南のフリーペーパー
Arikaina
2023/6号