Arikaina 2023/6 今後、どのような支援が?
近年の大きな台風被害から

今後、どのような支援があるのか?


 有田・海南地方に、大きな被害をもたらした今回の大雨。海南市にはさっそく、災害救助法が適用されました。被災者に対して、今後どのような支援が行われることになるのでしょうか。

※記事の内容は6月8日時点のものです。


近年、県内で災害救助法が適用された災害と今回の大雨の比較

'11年 台風12号
(紀伊半島大水害)

被害状況
全壊 240棟
半壊 1,753棟
一部破損 85棟
床上浸水 2,706棟
床下浸水 3,149棟死者 56人

行方不明者 5人
重傷者 5人
軽症者 3人

災害指定・適用
激甚災害
災害救助法
田辺市
新宮市
日高川町
那智勝浦町
古座川町

被災者生活再建支援法
(県内全域)


'17年 台風21号

被害状況
全壊 2棟
半壊 1棟
一部破損 102棟
床上浸水 1,111棟
床下浸水 958棟死者 1人
軽症 3人

災害指定・適用
災害救助法(新宮市)
被災者生活再建支援法(新宮市)


'23年 6/2の大雨
(6/6時点)

被害状況
全壊 6棟
半壊 4棟
一部破損 3棟
床上浸水 619棟
床下浸水 1,690棟死者 1人
行方不明者 2人
重症者 1人
軽症者 1人

災害指定・適用
災害救助法(海南市)


災害救助法

都道府県が主体となって応急救助を行う

 災害の発生直後、応急的に必要な支援を行うための法律です。適用されると、救助の実施主体が市町村から都道府県になります。市町村は都道府県の補助を受けることができるようになり、救助のための費用も国と都道府県が半分ずつ負担します。今回の大雨では、海南市がすでに適用されています。

 市町村は適用されると、以下のような救助を費用負担なしに実施できるようになります。

・避難所の設置
・応急仮設住宅の供与
・炊き出しその他による食品の給与
・被服、寝具その他生活必需品の給与・貸与
・医療・助産
・住宅の応急修理
・学用品の給与
・障害物の除去

海南市ではこのうち「避難所の設置」や「学用品の給与」を実施済み。残りの救助に関しても、今後、場合によって実施される可能性がありそうです。

金融や中小企業支援など、さまざまな措置も

 また'17年の台風21号のさいに災害救助法が適用された新宮市では、適用後、近畿財務局が金融機関や保険会社に対し、以下のような事項に対して配慮するよう要請していました。

・事情によっては、定期預金などの事前払い戻しに応じること
・預金などを担保とした貸付に応じること
・災害により支払うことのできない手形や小切手に対する配慮
・保険証券を紛失した場合も、可能なかぎり便宜を講じること

 このほか中小企業庁も、新宮市の被災した中小企業や小規模事業者を対象に、特別相談窓口を設置したり、災害復旧貸付を実施したりしていました。このように災害救助法が適用されることによって、さまざまな面でより強力な支援が期待できるようになると言えそうです。今回適用された海南市でも、同様の措置が実施されるかもしれません。

被災者生活再建支援法

国が住宅の再建を補助

被災者生活再建支援法による補助
※内閣府「被災者生活再建支援法の概要」より

全壊・解体・長期避難

基礎支援金 100万円

加算支援金
(住宅の再建方法)
建設・購入 200万円
補修 100万円
賃貸(公営住宅をのぞく) 50万円


大規模半壊

基礎支援金 50万円

加算支援金
(住宅の再建方法)
建設・購入 200万円
補修 100万円
賃貸 公営住宅をのぞく 50万円


中規模半壊

基礎支援金 なし

加算支援金
(住宅の再建方法)
建設・購入 100万円
補修 50万円
賃貸 公営住宅をのぞく 25万円

※1人世帯の場合は、各3/4の金額

海南市、適用はまず確実か

 生活基盤に著しい被害を受けた被災者を対象に、新たに住宅を建設・補修したり、賃貸住宅を借りたりする場合の資金を支援する制度です。資金は全都道府県が拠出する基金から支給され、国がその半額を補助します。'11年の台風12号(紀伊半島大水害)では県内の全域が、'17年の台風21号では新宮市がこの被災者生活再建支援法の適用を受けました。

 支援金額は大きく、全壊の場合は基礎支援金だけで100万円、住宅を新たに購入した場合はさらに200万円。大規模半壊の場合も、同じく50万円・200万円が支給されます。県福祉保健部によると、今回の海南市のように災害救助法が適用されていれば、まず適用されるとのこと。ただし応急的な対処のためのものではないため、やや時間が経ち、被害状況がはっきりしてきてからの適用になるだろうとのことです。適用するかどうかは、県が決定することになります。

県による支援制度

 '11年の台風12号のさいには県も独自に住宅再建支援事業をもうけ、「被災者生活再建支援法」に上乗せする形で補助金を支給しました。また'17年の台風21号による被害のさいには事業者支援制度をもうけ、被災した県内の事業者を対象に、建物や設備の修復費用の10%を補助していました。今回も、今後同様の制度の実施が期待できるかもしれません。

参考=わかやま県政ニュース「令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号による災害にかかる災害救助法の適用について」(http://wave.pref.wakayama.lg.jp/news/kensei/shiryo.php?sid=38582)/和歌山県「平成23年紀伊半島大水害の概要」(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/080604/2011disaster/2011disaster.html)/和歌山大学災害科学教育研究センター研究報告 第2巻 2012年2月 冨永哲雄「紀伊半島大水害後の住宅再建に関する一考察—新宮市旧熊野川町を事例として—」(http://repository.center.wakayama-u.ac.jp/files/public/0/3374/20180820134441548338/AA12781991.2.21.pdf)/内閣府「災害救助法の適用状況【平成23年度】」(https://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo3-3.pdf)/近畿地方整備局「平成29年 台風第21号 近畿地方整備局の取り組み」(https://www-1.kkr.mlit.go.jp/bousai/taiou/kinki/ol9a8v000000fepm-att/taifu21_gaiyo.pdf)/内閣府「平成29年台風第21号に係る災害救助法の適用について」(https://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/pdf/20171027_04kisya.pdf)/内閣府「平成29年台風第21号による災害に係る被災者生活再建支援法適用団体一覧」(https://www.bousai.go.jp/taisaku/seikatsusaiken/pdf/h29_taihuu21.pdf)/わかやま県政ニュース「令和5年06月02日の台風2号に伴う被害状況等について(第7報)」(http://wave.pref.wakayama.lg.jp/news/kensei/shiryo.php?sid=38585)/内閣府「災害救助法の概要(令和2年度)」(https://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo1-1.pdf)/海南市「大雨災害による学用品の給与について(災害救助法)」(https://www.city.kainan.lg.jp/important/5473.html)/財務省近畿財務局「平成29年台風第21号にかかる災害に対する金融上の措置について」(https://lfb.mof.go.jp/kinki/wakayama/kinsoti291027wakayama.html)/中小企業庁「【適用地域追加】平成29年台風第21号に係る災害に関して被災中小企業・小規模事業者対策を行います」(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/2017/171031saigai.htm)/内閣府「被災者生活再建支援法の概要」(https://www.bousai.go.jp/taisaku/seikatsusaiken/pdf/140612gaiyou.pdf)/和歌山県「被災者住宅再建支援制度(県事業)」(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/080800/sien.html)/和歌山県「平成29年台風21号により被災された事業者の支援について」(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/060100/hisaishien.html)


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