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Arikainaメールマガジン 2022/5号(2022/5/10発行)


Arikainaメールマガジン 2022/5号

皆様こんにちは、Arikaina発行人です。 今月は以下のような記事を掲載しています。

※本紙ホームページから全ての記事をご覧いただけます。
Arikainaホームページ
https://arikaina.com


▼コロナワクチン 3回目が60〜70%に 4回目も7月ごろから本格化か
https://arikaina.com/_article/202205/vaccine-1.html

▼何百年も、地域の心のよりどころに 紀美野町・小川八幡神社の「大般若経」
https://arikaina.com/_article/202205/daihannya-1.html

▼江戸時代の南海地震で、避難する人を誘導 濱口梧陵シンポジウムの映像を期間限定で公開
https://arikaina.com/_article/202205/hamaguchi-1.html

▼5月も延長して実施 新型コロナウイルス 無料の抗原検査・PCR検査
https://arikaina.com/_article/202205/pcr-1.html

▼ほか記事一覧
https://arikaina.com/_article/202205/kiji-index.html


メルマガ読者の皆さんこんにちは、Arikaina発行人です。

さて今月は記事にはしなかったのですが、先月、県内で大きな話題となったニュースがありました。県議会でのIRカジノの否決です。全部は見てないんですが、全国紙もどこも一面で報じていたようです。

私も昨年11月から特別委員会はずっと通い、ほかにも県や市の議会中継を見たり、特に当初議決が予定されていた2月からこの4月にかけては、このIRカジノのことにかなり時間を割いていました。否決されたときは傍聴席にいたのですが、開票のときはほんとにドキドキしました。ほんとにまさか、まさかです。どこかの新聞が「反対派はグータッチなどして喜んでいた」とか書いてましたが、そのうちの一人私です(笑)

いや一応仮にも取材という名目(記者席には座ってませんが)なので反対派というのもおかしいのですが、でもずっと追っかけて記事にして、このメルマガでも何回か書きましたが、さすがに今回はやめといた方がいいと思うようになり、まあ反対でしたので、委員会の傍聴席とかでよく顔をあわせてた人たちとグータッチしてました。

その前日のIR特別委員会で反対多数になっただけでも、かなり画期的なことだったと思います。そのときも傍聴席にいたのですが、これでもし明日の議会で可決されても、この委員会の結果は結構影響があるんじゃないかとか、そういうの記事にしようかなとか思ってました。要はそれぐらい、議会では可決されるだろうと思ってたということです。

おそらく反対活動されてた方も、大方はそう思われていたのではないかと思います。和歌山市議会でも委員会では県議会と同様かなり厳しい意見が出ていましたが、結局は圧倒的多数で可決、ということになってましたし。

決議の当日、決議前にちょうど昼休みで、車でパン食べながら票読みしてみましたが、拮抗するかもしれないけどやっぱ可決かなあ、みたいに思ってました。ただ直前になって無記名投票になったという話を聞いて、ちょっと「おや?」という空気に。「ほんとは反対したいけど、分かったら困る人が反対しやすいようにってこと?」みたいなことを、傍聴席の顔なじみさんたちと話してました。

なぜ否決されたのか、どういうところが問題だったのかについてはIR特別委員会のメンバーで、おそらくもっとも発言数の多かった玄素議員がブログにくわしく書いておられて、あんま付け足すようなこともないんですが、ちょっとだけ足してみようと思います。

記事でもくり返し書きましたが、とにかく地元への説明がほんとにありませんでした。事業者が決まってからは説明会は各地域で1回ずつしかやってませんし、それも再質問はできない、つまりに答えになっていないような答えであってもそれ以上は聞けない、という形でしか行われませんでした。

これは和歌山市議会の方で結構言われいたことですが、渋滞対策は交差点をちょっと改良して信号機を工夫する、ぐらいしかなくて「それで大丈夫なのか?」という声もかなり出ていました。大体あそこらはただでさえ渋滞するの分かってるので、地元にもっと賛成してもらおうと思えば渋滞対策はもっとしっかりやっとこうとか思いそうなものなのですが、非常に弱い説明しかなかったように思います。

この調子では、マリーナのすぐ近くに住んでる人らが不安に思うのは当然です。私の知ってるかぎり、ここらの自治会は全部反対に回ってました。そもそもあれだけの大事業ですので、IRカジノが決まったら決まったで、どこかで地元の人たちの協力を仰がないといけない場面は出てくるはずです。しかしあの調子ではトラブルになる可能性が高かったのではないかと思いますし、風力発電被害のときみたいに何かしら我慢を強いられるような人たちが出てしまっては、仮にIRカジノが成功したとしても、それでええんかなというようなことになってたんでは、という気がします。

とにかくこのIRカジノのこと追っかけてて、県や事業者からは、地元の人たちの意見を聞くという姿勢をほんとに感じませんでした。なんかもう説明どころか説得する相手ぐらいにしか思ってないんじゃないんだろうか、と思うこともしばしばでした。

いやまあ説明会とかパブコメとか、やるにはやっています。でも整備案を見ますと空欄があって、ここはパブコメとかの意見を聞いた上で書く、みたいな感じになってます。要は話聞く前からそれ以外のとこはいじる気なくて、なんかもうお情けで住民用に用意した空欄だけ埋めさせて「あげている」みたいな感じです。

その一方で、東大とか京大とかの人たちによる有識者会議で出た意見は、かなりとり入れられていたようです。たとえば有識者の中に和食の専門家とおぼしき方がいらっしゃるのですが、整備案をみますと、日本の伝統文化に関する施設の中でやたらと和食が強調されてます。第3回の分は議事録が公開されているのですが、知事も出席していて「ものすごく勉強になって、大変実りの多い議論をしていただいた」などと述べています。

一方で地元の住民からの意見は、それだけまとめて載せときゃいい、ぐらいのあつかいです。なんかもう最初から外の有識者の人たちの意見は聞くもので、地元の人たちの意見は聞く格好だけすると決まってたんではないか、という気すらしてきます。しかし結局、今回うまくいかなかったのはこういうとこなんじゃないかと私は思います。

今月号でとり上げた記事で、紀美野町の小川八幡神社に伝わる大般若経の話があります。大般若経というのは全部で600巻あるのですが、小川八幡神社のものは古くは奈良時代から室町時代まで、地区の人たちがさまざまな方法で全部そろえ、年に一回、神社の行事で使われてきました。転読(てんどく)といって、あのお経をばさっと上げたりするやつと言えば、ご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか。

なにせ600巻もありますので、集めるのは相当苦労があったはずです。小川地区の人たちがあつめ出したのが室町時代ごろらしいのですが、当時はこういうお経というのは大変高価なものだったらしく、地区からしたら600巻あつめるというのは、それこそIRカジノみたいな大事業だったはずです。

一番古いものは奈良時代のもので、600巻のうち100巻ぐらいあります。書き写した方の中には、正倉院の文書にもその名が見えるという経師(きょうじ=写経のプロ)の方もいるそうなのですが、たしかに素人目にも格調高さのようなものを感じます。一方、時代が下がって南北朝時代のころに書き写されたものもあり、こちらは地元のお坊さんが、600巻をそろえるために足りない分を高野山に行って書き写したものとみられています。書かれた方にははなはだ恐縮なのですが、奈良時代のものと比べますと、やや親近感を覚えるような感じです。

ではこの地元のお坊さんの書いたものは、奈良時代のものに比べて価値が劣るのでしょうか?決して、そんなことはないはずです。格調の高さとかでは高名な経師のものに及ばなくとも、自ら高野山まで足を運んで書き写したからこそ、600巻をそろえることができたはずです。この大般若経はまだ文化財指定はされていませんが、するとしたら600巻そろって申請することになるそうです。全部そろっていることに価値があるわけです。

今回のIRカジノは、奈良時代の経師が書いた立派なお経を買ってくる、そこはできていたように思います。でも足りない分をどうしようとなったとき、だったら自分たちでお経のあるところまで行って書き写してくる、地元の人たちにそんな情熱はあったでしょうか?とてもそうは思えません。それどころか、地元の人の意見が反映された部分自体、はたしてどれだけあったでしょうか?

先日、マリーナシティのことを調べようと思って古い「県民の友」をみていたところ、ベストセラー「日本人とユダヤ人」で有名な山本七平さんが、当時の仮谷知事と対談している記事がありました。私も「日本人〜」は昔読んだのですが、和歌山とゆかりのある方とは存じませんでした(ご両親が新宮の方らしいです)。

で山本さんと仮谷知事が仰るには、和歌山弁はおそらく日本で一番敬語の足りない言葉であり、それは昔から民主化が進んでいたということ。雑賀衆の党領も自分たちで選び、一揆のさいにもグループからリーダーを選んでいた、とのことです。

山本さんは仮谷知事から「これからの時代の変化に何をもって立ち向かうか」と聞かれて、「それは自分たちの蓄積を調べることですね。いかなる文化的蓄積があるかということなんです。知事さんが先におっしゃられた、和歌山弁の問題なんか大変おもしろいですよ。それは平等意識ということですから。古くからの伝統、文化を探し、いかに活かすかということもとても大切です」と答えています。

今回のIRカジノ事業では、仁坂知事はことあるごとに「和歌山の発展のために」とか「成長のために」といったことを強調していました。であれば、この山本さんのお考えに立てば、地域を盛りあげよう、この和歌山の自分らの特徴を活かそうと考えるなら、まず地元の人たちの意見をもっとよく聞くべきだったのではないでしょうか。自分たちで自分たちのことを信じないで、どうやって成長などできるのでしょうか。

今回のIRカジノが否決された原因は、直接的には玄素議員のブログでふれられているような資金調達のことや事業者の対応といったことだと思いますが、本質的には、地元や地域のものではなく借り物で終わった、そこではないかと思います。


というわけで、今月はこれぐらいにしておきます。ちなみに小川の大般若経はもし国に申請して文化財に指定されれば、今回取材した感じでは、少なくとも重要文化財にはなるのではないかと思います。

IRカジノも国に申請されればまた記事にしようと思ってましたし、反対活動していた方も反対を続けると仰っていました。また6年後とか7年後に募集があるのではとかいう噂もあるみたいですが、まあとりあえず和歌山では終わりましたので、またほかのことを取材していきたいと思います。

ここんとこ横ばいかちょっと増えてきてる感染状況ですが、連休終わってどうなるかまた心配なとこです。今月は記事としてはこれが多かったのですが、なんかもうずいぶんと「若い人の病気」になったなあ、という印象です。とりあえずこのまま増えていかないことを祈りつつ、ではまた来月〜

※次号は6月10日(金)発行です。

有田・海南のフリーペーパー Arikaina
発行 内河将史
http://arikaina.com
arikaina@gmail.com
〒649-0111 和歌山県海南市下津町方187-10


参考=
玄素彰人ブログ すべては未来(あす)のために!!「臨時議会報告」
http://blog.livedoor.jp/gensoakihito/archives/59246869.html
和歌山県「和歌山県特定複合観光施設区域整備計画(案)に対する県民意見募集について」
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020100/d00208944.html
和歌山県「IR誘致に関する有識者会議」
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020100/ir/yusikisya/main.html
コトバンク「経師とは」
https://kotobank.jp/word/%E7%B5%8C%E5%B8%AB-478228
瀬戸の島から「平城京の写経所NO2 正倉院には、給料前借り文書も残っています」
http://tono202.livedoor.blog/archives/8792575.html
「小川八幡神社大般若経の文化資源化研究申請書」代表者・山口英男、'19年東京大学史料編纂所
「小川八幡神社大般若経調査外報 2019—2021」東京大学史料編纂所 特定共同研究「小川八幡神社大般若経の文化資源化研究」代表 山口英雄、2022年3月
県民の友 平成元年12月号
http://www.big-u.jp/prefg/000200/kenmin/h1_5/pdf/h011201.pdf
新宮市観光協会「新宮モダン 新宮に息づく『文化のDNA』」
https://www.shinguu.jp/shinguu-modern-file07

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