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Arikainaメールマガジン 2023/12号(2023/12/10発行)


Arikainaメールマガジン 2023/12号

皆様こんにちは、Arikaina発行人です。
今月は以下のような記事を掲載しています。

※本紙ホームページから全ての記事をご覧いただけます。
Arikainaホームページ
https://arikaina.com


▼「和歌山県は未開の地」映画「翔んで埼玉」が表現、知事もツイート
https://arikaina.com/_article/202312/tonnde-1.html

▼ずさんな工事が発覚した淺川組のトンネル 県がほかのトンネルも検査するも…検査は写真のみ
https://arikaina.com/_article/202312/asakawagumi-1.html

▼県庁は自民党支持?自民党本部のイベントを県が広報
https://arikaina.com/_article/202312/ja-1.html

▼豪雨で被災した住宅の応急修理 海南市が工事完了期限を延長
https://arikaina.com/_article/202312/emergency-repair-1.html

▼ほか記事一覧
https://arikaina.com/_article/202312/kiji-index.html


メルマガ読者の皆さんこんにちは、Arikaina発行人です。

先月は広川町が製作依頼した動画に「なんやこれ?」みたいな記事を書きましたが、今月もその続きと言いますか、同じようなのが出てきたので大きく記事にしています。映画「翔んで埼玉」についてです。

前作はよく知らなかったのですが今度は関西が舞台ということで、私が普段見ているサイトとか、いろんなところで目にしていました。で、たしか初見はX(旧ツイッター)だったと思うのですが、「和歌山県は未開の地」というのを目にしたわけです。

まあ田舎であることは確かですし山間部が多いのも事実ですが、それでもまだ90万人が暮らしているとこを指して、いくらフィクションとは言え「未開の地」はさすがにいかがなものでしょうか。で、記事にも書きましたがXを見てますと「未開の地和歌山で笑った」だの、「和歌山が未開の地になってて爆笑」みたいなツイートが並んでいます。

何なんだと思って調べてみますと、3年前の前作では関東地方が舞台になっており、なんかその中では群馬県が「秘境の地」みたいな描かれ方をしていて、それが「笑いのネタ」になっていたようです。

で、今度は関西が舞台になり、その役回りが和歌山になったということのようです。前作から見ている人たちからしますと「今回も秘境・未開の地がきたーー」みたいな感じなんでしょうか。制作側の人たちは、こういうのを「愛のあるディスり」とか呼んでいるようなのですが、そんなんで面白がれるというのがよく分かりませんが…

で、まあはっきり言って、不愉快です。たしかに近畿ではもっとも人口が少なく、関西で秘境とか未開の地の役となれば和歌山、ということなのかもしれませんが、なんで自分の住んでいるところが映画の笑いのネタのために「未開の地」とか呼ばれないといけないのでしょうか。

しかも記事でも書きましたが、製作者側は最初から「10人中2人が怒るぐらいでちょうどいい」とか言って、私のように怒る人が出ることは承知の上で「和歌山は未開の地」と言ってるみたいなのです。で、抗議が来たときに備えてQ&Aをつくり、なんか抗議が来ても「謝ったら済む」ぐらいに考えているようです。


監督:想定問答というほどのものはないですね。ただひたすら謝る(笑)。「申し訳ございません!!」と。
若松:「確かにこういう事実がありまして、映画ではこういうふうに言わせていただいたんですけれども……申し訳ございません!!」と言うしかないですよね。「ただわたしたちは郷土愛をベースに作ってるんで、決して馬鹿にしているわけじゃなくて、愛を持って作ってます」とはお伝えしています。言い訳に聞こえるかもしれませんが(笑)。
(東洋経済オンライン「『翔んで埼玉続編』監督ら語る県ディスりの線引き なぜ今回の舞台は滋賀?撮影の裏話も聞いた」より)

残念ながらと言いますか映画は大ヒットしていますので、少なくともしばらくは「和歌山は未開の地」のようなフレーズをSNSなどで見かけることになると思います。そしてしばらく経っても、ひょっとしたら長期間に渡って、何か機会があるたびにこうしたことを言ったり、書き込んだりする人が出てくるかもしれません。記事でも触れましたように、昔のように和歌山をバカにすることを言う芸人さんとかも出てくるかもしれません。

今はもう小学校高学年にもなれば半分ぐらいの子はスマホを持ってるそうですから、和歌山の子どもたちも、いろんなところで「和歌山は未開の地」といったフレーズを目にして育つことになるのではないでしょうか。製作者の方は「愛を持って」と仰っていますが、そこではもはや愛があるとか無いとかは関係ありません。言葉がどんどんひとり歩きしていくと思われます。

と言いますのも、こういうので思い出すのがあの「キンキのおまけ」という曲です。今40代以上ぐらいの和歌山の人なら、おそらく覚えておいでなのではないでしょうか。若い人でも、曲は聞いたことがなくても「キンキのおまけ」というフレーズは聞いたことがある、という方は多いと思います。

一応あの歌も最後は「近畿のエース・和歌山」と歌って終わりますので、今で言う「愛のあるディスり」だったのかもしれません。しかし実際には「キンキのおまけ」というフレーズだけが有名になり、何かにつけて「まあキンキのおまけやしな」みたいなことを、当の和歌山の人が言うようになってしまいました。今でも、折に触れて言う人もいるかもしれません。

そしてこれはあくまで私の感覚ですが、和歌山の人の中に「どうせあかなよお」とか「もうしまいじょよ」みたいな、何かにつけて和歌山や自分たちを卑下する「卑下グセ」のようなものを作るきっかけになってしまったのでは、と思っています。県外の人たちにも「和歌山の人らは、自分らのこと変に言われても怒れへんのやな」みたいな印象を与えてしまったかもしれません。

今回の「和歌山は未開の地」も、同じようなことになるのではと心配しています。私は映画は観ていませんが(というか観たくありませんが)、映画が終盤になるにつれてどういう展開になるのかはSNSの書き込みとかでだいたい知ってますが、たしかに映画を最後まで観れば、製作者の方々が仰っているような「愛」を感じられるのかもしれません。

しかしいくら大ヒットしたと言っても、何千万人もの人が一時に観るわけではありません。観ていない人の方が圧倒的に多いわけで、その人たちにもメディアやSNSを通じて「和歌山は未開の地」というフレーズが広がることになります。ほとんどの人は製作者の方々の言う「愛」を感じることなく、「和歌山は未開の地」という言葉に触れ、そして使う人も出てくることになるのではないでしょうか。

もしそういう展開になった場合、製作者の方が「和歌山は未開の地」という言葉を使ったことは、結局どういう意味を持つことになるでしょうか。製作者の方がいくら「愛がある」と仰っても、映画のプロモーション、あるいは劇を盛り上げるために「バカにされている県がある」ということで興味を持たせた、ということ以上の意味を持つことはないのではないでしょうか。

その意味で、私はこの「和歌山は未開の地」という表現は「愛のあるディスり」ではなく、「十分に差別」と言っていいと思っています。

大ヒットしたわけですから、映画の製作側としては大成功されたんだろうと思います。しかしもし私が懸念しているような展開になるようでしたら、映画を創作するという意味においては、「愛がある」にも関わらず、それが届かないかもしれない表現や設定を使わなければ映画を成立させられなかったということですから、その意味では製作者の方々は失敗というか、何と言いますか、映画に負けてしまっているようなものなのではないでしょうか。


と言うわけで、今月はお題ひとつだけになりましたがこれくらいにしておきます。先月の広川の動画でもそうでしたが、いくらお客を呼ぼうとか注目を集めようとかするのでも、卑屈になってしまってはいけないと思います。

私は昔大阪に住んでいたことがありますが、正直、京阪神あたりの人の中に他地域をバカにするような人がいないかというと、残念ながらそうとも言えないところがあります。記事にしました芸人の発言のようなこともそうですし、京阪神あたりに住んでたご経験のある方なら「大和川以南」といった言い方を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。

そういう中で「和歌山は未開の地」みたいな言葉がカジュアルに広がると、どうなっていくでしょうか。Xでは「未開の地、和歌山に行きたくなりました」みたいに書き込んでいる人もいますが、こういう人たちが実際に和歌山に来れば「未開の地、和歌山に来ました」みたく書かれるのではないでしょうか。

和歌山に関心を持ってもらえて、観光にも貢献するのならそれでいいではないか、という方もいるかもしれません。前述の東洋経済の記事によりますと、埼玉県の上田前知事は映画の原作となった本の帯に「悪名は無名に勝る」との一文を寄せられたそうです。

しかしこれでは観光客が増えたとしても、言い方は悪いですが「サル山にサルを見に行く」ような感覚の人しか来ないのではないでしょうか。それでは長期的に見れば、和歌山にメリットばかりとも言えないのではないかと思います。観光客が増えれば増えるほど、和歌山に変な偏見を持つ人が増えていく、ということになるのではないでしょうか。

私はこういう地域情報をあつかうフリーペーパーを発行していますが、どこの地域にも自分の住んでいるところを盛り上げようとされている方はいらっしゃるもので、それこそ人口があと数十人になった集落とかでもそうです。休校になった学校を使ってカフェを開いたり、人手不足で続けられなくなった伝統行事を伝えようと、小学校へ出かけて子どもたちに教えたり。

もちろん、ひとつ1つは小さなことです。世の中そんなにお金や時間のある人ばかりではありません。でも地域の価値やアイデンティティは、そういうことの積み重ねでできていくものなのではないでしょうか。その一方で、大きな資本をかけた映画が「和歌山は未開の地」とか言い出したら、いろんな人たちがこつこつやってきたことが簡単に台無しにされてしまうのではないかと心配ですし、もしそうなったら残念で仕方ありません。

ヒットしているということはそれだけこういう表現を受け入れている、問題ないと考えている人たちがいるということであり、製作者の方が「10人の内2人ぐらい」と言っているように、私のように怒っている人は少数派なのかもしれません。でも、人が少なくなろうがバカにされようが、少しでも地域を盛り上げようとがんばっている人たちいる、そんな人たちがいる和歌山は、断じて「未開の地」などではありません。冗談でもフィクションでも、そんなことを言われて黙っていることは、私にはとてもできません。

東映に取材を申し込んでも音沙汰なし(一応断っておきますが、取材の申し込みが届いていることは電話で確認しています)の私が言っても微力もいいところでしょうが、「和歌山って、バカにされて当たり前なんやな」とか思う人(特に子ども)を少しでも減らせるよう、「そんなん思うことら、まったくあれへん」ということを、事あるごとに言っていきたいと思います。

そもそも、製作者の側では「愛のあるディスり」という表現をされているのですが、この「愛」という言葉ほど、いろんな感情を含む言葉もそうは無いのではないでしょうか。愛ゆえに結婚する人もいれば、愛ゆえに殺す人もいます。

「お前のためを思って殴ったんだ」とか「寝たのは事実だが合意の上だった」とかも、愛ゆえと言えば愛ゆえの表現なのかもしれません。ま、要は便利な言葉ということです。たとえばレイシストとか、それに類するような人たちにとっても。こちらもまあこれぐらいは、ディスり返させていただいてもよろしいのではないでしょうか。それではまた来月〜

※次号は1月10日発行です。

有田・海南のフリーペーパー Arikaina
発行 内河将史
https://arikaina.com
arikaina@gmail.com
〒649-0111 和歌山県海南市下津町方187-10

参考=
映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』公式サイト
https://www.tondesaitama.com/
映画『翔んで埼玉』公式サイト
https://www.tondesaitama.com/one/
東洋経済オンライン「『翔んで埼玉続編』監督ら語る県ディスりの線引き なぜ今回の舞台は滋賀?撮影の裏話も聞いた」
https://toyokeizai.net/articles/-/717283
NTTドコモ モバイル社会研究所「【子ども】スマホ所有率小学5年生で半数、中学2年生で8割を超える(2023年2月16日)」
https://www.moba-ken.jp/project/children/kodomo20230216.html
イオンの格安スマホ・格安SIM【イオンモバイル】「スマホを子供に持たせるのはいつから?小学生では早い?スマホのメリットや注意点も解説スマホガイド」
https://aeonmobile.jp/column/kids-smartphone-when/
WINDS/ウインズ平阪 Official Site
https://winds-wakayama.com/songs/ep02_01.html

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