Arikaina 2023/9 移民画家・上山鳥城男さん
激動の時代にアメリカで創作活動

知られざる移民画家・有田川町出身の上山鳥城男さん 県立近代美術館で作品を展示


 和歌山城となりの県立近代美術館では10月〜11月にかけ、県内から海外に移民した美術家の作品を展示する展覧会「トランスボーダー:和歌山とアメリカをめぐる移民と美術」を開催します。この中で、今まであまりとり上げられることのなかった有田川町出身の画家・上山鳥城男(ときお)さんにスポットがあてられ、作品約10点が展示されることになっています。

上山鳥城男《疎開者》1942年 油彩、キャンバス 全米日系人博物館蔵 Gift of Kayoko Tsukada, 92.20.3

 上山さんは1889年(明治22年)、旧金屋町のさらに前身である鳥屋城村の出身。県立美術館によると「鳥城男」というお名前も「鳥屋城」にちなんだものとのことです。父も兄も村長をつとめたという地元の名家の生まれで、現在も地元にお住まいの親類の方がいらっしゃるとのことです。

 1906年(明治39年)、19歳にして移民としてアメリカに。大学で美術を学んだあと、1921年(大正10年)にはロサンゼルスで「赫土社(しゃくどしゃ)」という美術家団体をつくり、中心メンバーとして活躍しました。

 第二次世界大戦がぼっ発すると、上山さんは日本人を収容する強制収容所に。しかしここでも絵を描きつづけ、ほかの収容者に絵の指導もしていました。今回の展覧会では、このときに描かれた「疎開者」という作品も展示されます。

 戦後はロサンゼルスに戻り、日本の雑貨などをあつかう「文化堂」というお店をオープン。1954年(昭和29年)、65歳で亡くなりました。県立美術館によると「文化堂」は現在も上山さんの姪ごさんがロサンゼルスのリトル・トーキョーで経営されており、観光客などに人気のお店になっているとのことです。

上山鳥城男《鳥屋城山》1936年 油彩、キャンバス 有田川町立鳥屋城小学校蔵

 渡米してからはアメリカで過ごされた上山さんですが、一度だけ、1936年(昭和11年)に帰国。鳥屋城小学校で展覧会を開催しました。このとき、故郷の山を題材に「鳥屋城山」という作品を描いて小学校に寄贈。今も校長室に飾られているこの作品も、今回の展覧会で展示されます。

 若くしてアメリカに渡り、激動の時代に美術家として活動。ロサンゼルスの美術界にその足跡を残した上山さん。県立近代美術館では、寄贈されるなどして地元の有田周辺に残っている上山さんの作品がないか探しているとのことで、「もしそういった作品に心あたりがあれば、ぜひ博物館にご連絡ください」と話しています。

▼展覧会「トランスボーダー:和歌山とアメリカをめぐる移民と美術」
▽開催期間=9月30日(土)〜11月30日(木)
▽観覧料=一般800円、大学生500円、高校生以下と65歳以上の方は無料
10月1日(日)、11月18日(土)、11月19日(日)、11月22日(水)は無料になります。
▽会場と問い合わせ=県立近代美術館(和歌山城南)
Yahoo!マップで見る
TEL.073・436・8690
駐車場有(来館者は2時間まで無料)

▽期間中、学芸員によるフロアレクチャーが開催されます。日程は10月1日(日)、11月11日(土)、11月25日(土)の各日14時〜(約1時間)。予約不要。観覧券が必要です。

※《疎開者》《鳥屋城山》とも、画像は県立近代美術館提供

参考=和歌山県立近代美術館「第2回和歌山県人会世界大会記念特別事業 トランスボーダー:和歌山とアメリカをめぐる移民と美術」(https://www.momaw.jp/exhibit/2023transbordering/)/コトバンク「上山鳥城男」(https://kotobank.jp/word/%E4%B8%8A%E5%B1%B1%E9%B3%A5%E5%9F%8E%E7%94%B7-1057531)/Bunkado「Tokio Ueyama」(https://www.bunkadoonline.com/pages/tokio-ueyama)


次の記事
有田川が、誰でも自由に釣りができる川に

前の記事
"分割された7つの発電所"計画が物議


←このページのコード

有田・海南のフリーペーパー
Arikaina
2023/9号