Arikaina 2023/12 淺川組トンネル、検査は写真のみ
ほんまに大丈夫?

ずさんな工事が発覚した淺川組のトンネル 県がほかのトンネルも検査するも…検査は写真のみ[1]


 7月、ずさんな工事が発覚した那智勝浦町〜串本町を結ぶ「八郎山(はちろうやま)トンネル」。県ではこれを受け、トンネルを施工した和歌山市の(株)淺川組(あさかわぐみ、以下「淺川組」)が県内でほかに施工したトンネルを検査。しかしその検査は、写真による検査のみであることが分かりました。岸本知事は記者会見で「現時点で、他のトンネルについて問題はないと聞いている」と話しています。


県が調査した淺川組施工のトンネル(赤字は本紙配布地域内のトンネル)

二川トンネル(中辺路町温川)
毛原トンネル(紀美野町毛原宮)
上福井トンネル(田辺市龍神村柳瀬)
覚海トンネル(高野町高野山)
大門口トンネル(高野町高野山)
千本槇トンネル(高野町高野山)
城山トンネル(海南市黒江)
小峠トンネル(みなべ町清川)
面谷トンネル(田辺市上芳養)
中芳養トンネル(田辺市中芳養)
吉礼西トンネル(和歌山市吉礼)


工事中の城山トンネル(海南市黒江、'15年撮影)

 県は7月、昨年9月に完成した「八郎山トンネル」で施工不良があったと発表。県ではこれを受け、淺川組が単独あるいはJV(共同企業体)で施工したトンネル、計11か所を検査しました(別表参照)。有田・海南地方のトンネルでは紀美野町の毛原トンネルと、海南市の城山トンネルが含まれています。

 しかし検査を実施した県土整備部によると、その検査は写真による検査のみ。壁に穴を掘って確かめるなど、現地での検査は行われていないとのことです。「通常の検査時に出してもらう写真は代表的なものだけだが、それを業者から全部提示してもらって、県職員ですべての写真を検査しました(同課)」

 ずさんな工事が発覚した「八郎山トンネル」では、業者が書類を改ざんしていたことが分かっています。また本来なら県職員による段階確認が60数回必要だったところが、実際には3回しか行われておらず、県による確認の不備も指摘されています。

 なお県の道路建設課長は9月の県議会で、これら11か所のトンネルについて「定期点検を5年前に実施しており、緊急に対策を要するものはない。今後、覆工コンクリートの厚みを実測したいと考えている」と答弁しています。

 淺川組のホームページによると、同組はトンネル以外にも橋や道路など、さまざまな公共事業を請け負っています。しかし県土整備部によると、今回検査されたのはトンネルのみ。ほかの淺川組が施工した設備については、検査は実施していないとのことです。

「壁の厚さが3センチ」
「中心がずれている」
…でも、処分は指名停止6か月

 施工不良の発覚以降、県では「八郎山トンネル技術検討委員会」を設置し、専門家による検証をはじめました。その結果、「本来は壁の厚さが30センチ必要なのに、3センチしかない部分がある」「道路の中心とトンネルの中心がずれている」「左右の壁で厚みが違う」「壁の厚みを証明する書類が改ざんされている」など、次々とひどい実態が明らかになりました。岸本知事も記者会見で、「(専門家が)昭和30年代の職人さんが経験と勘でやっていたような感じだという感想を漏らされていました」と話しています。

 しかしこれだけずさんな工事や書類の不正が行われても、県が淺川組に課した処分は「6か月の入札参加資格停止」。県土整備部によるとあらかじめ用意されている要綱があり、これに基づいて期間が設定されたとのことです。同要綱では、最も長い資格停止期間でも2年間となっています。

 同部によると資格停止期間が終われば、淺川組はふたたび公共事業の入札に参加できるようになるとのこと。淺川組の資格停止期間は、1月26日までとなっています。なお「八郎山トンネル」は業者の負担により補修工事を行い、工事が済めば開通する予定とのことです。

次ページ「長野県では昨年、『壁の厚さが4センチ』のトンネル」

(1) (2)


次の記事
自民党本部のイベントを県が広報

前の記事
「和歌山県は未開の地」映画で表現


←このページのコード

有田・海南のフリーペーパー
Arikaina
2023/12号