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Arikainaメールマガジン 2020/12号(2020/12/10発行)


Arikainaメールマガジン 2020/12号


皆様こんにちは、Arikaina発行人です。
今月は以下のような記事を掲載しています。

※本紙ホームページから全ての記事をご覧いただけます。
Arikainaホームページ
https://arikaina.com


▼続く献血不足…県赤十字血液センター、特に成分献血への協力を呼びかけ
https://arikaina.com/_article/202012/blood-crisis-1.html

▼コロナの影響は補填してほしい 公共事業はもっとしてほしい 有田・海南の市・町が国に要望
https://arikaina.com/_article/202012/corona-opinion-1.html

▼コロナ禍で需要急増 困っている家庭に届ける食料品を募集
https://arikaina.com/_article/202012/food-1.html

▼冷水浦に伝わる「十五娘」 黒江小学校が紙芝居を復刻、デジタル化
https://arikaina.com/_article/202012/15musume-1.html


メルマガ読者の皆さんこんにちは、Arikaina発行人です。
先月号のメルマガで、うちの温度計さんが15℃くらいになったら…みたいなこと書きましたが、やっぱり寒くなるにつれコロナがまた猛威をふるってきました。とにかく、大阪が大変なことになっています。先日、和歌山ほか他府県から大阪へ看護師が派遣されましたが、到底足りているわけでもなさそうです。

あくまで想像ですが、このまま行くと次は他府県で大阪の患者を受け入れるようになってくるのではないでしょうか。そうなりますと、和歌山からしても「大阪大変そやなあ」では済まない事態になってきます。

おそらく最初は大阪でコロナ用の病床を確保するため、コロナ以外の患者さんを他府県に転院させるようになるのではないでしょうか。そしてそれでも足りなければ、コロナの患者さんを他府県で受け入れるという形になっていくと思います。大阪南部であれば和歌山、東部であれば奈良や滋賀、といった具合です。

それぐらいになると、大阪ではコロナ以外の診療にも多大な影響が出てくるはずです。うちのホームページでも載せていますが、仁坂知事が4月に発表した段階整理で言えば、現状ですでにC(感染者を入院させる病床のやりくりが大変になる)からE(病床を確保するため、陽性者にホテルなどに移ってもらうようになる)にうつるくらいの段階になっていると思われます(DはPCR検査が順番待ちになるというものでしたが、検査能力はどこでもかなり上がっているので、ここは飛ばしてEでいいかと思われます)。

他府県でも患者を受け入れるくらいになれば、もはやF(不安を感じる人々が感染症外来のある病院へ殺到する)ぐらいの段階が現実味を帯びてきます。和歌山や奈良も長引けば病床がひっ迫し、Cぐらいの段階にはすぐ行くと思います。

そうなると和歌山はじめ大阪周辺の他府県でも、コロナ以外の診療にも影響が出てくるはずです。手術を受けられない/先延ばしになるですとか。あらためて思いますが、こういう感染症は和歌山だけよければいいとか、そういう問題ではまったくないということです。

さいわいにして有望そうなワクチンが出てきて、これでようやく出口がちょっと見えはじめたのかもという感じです。ただワクチンがうまくいっても、そんなすぐにみんなが接種できるわけではありませんし、接種後にどれくらいの活動が社会的に容認できるのか、その判断にもしばらく時間はかかると思われます。少なくともこの冬、2月くらいまでは予断を許さない状況が続くのではないでしょうか。

にもかかわらず、相変わらずGoToなんとかも続けられているままです。あれだけ医師会が一時休止を求めたり、連日、医療現場の悲惨な現状が報道やSNSで伝えられているにもかかわらず、です。県が独自に行っている観光キャンペーン「蘇えりの地、わかやま」も、相変わらず続けられています。

仁坂知事もそうですが、政治家の方はことあるごとに「医療従事者への感謝」を述べています。そうであれば、感染が広がれば、広がらないような政策に切り替えなければおかしいのではないでしょうか。

感染が落ち着いている時には経済振興のための政策をし、感染が広がってくれば、感染抑制のための政策に切り替える。これができればいればいいのですが、今回のことを見ていて思ったのは、国も県も、どうもそううまくは切り替えられるような体制にはなっていなかったのではないか?ということです。

で、仁坂知事はこの事態に対し、「ティンバーゲンの定理」と「マンデルの定理」とやらをもち出しています(*1)。知事はインテリの割には普段はこういう専門用語は使わず、できるだけ平易に語ろうとされているところに私は好感を持っていたのですが、やおら難しそうな用語を持ち出されたので「おや?」と思っていました。

調べてみますとこれは経済学では有名なものだそうで、ティンバーゲンの定理とは「N個の目標にはN個の政策をもって対応する」というものです。つまり、感染を拡大させるな vs 経済も大事だ、でケンカするのではなく、感染拡大の抑制と経済対策を、別々の政策をもって実現しようということです。

もうひとつのマンデルの定理とは、政策にはたいていいろんな副作用がともないますが、それは一旦置いといて、目標を実現するためにもっとも『安上がり(これは仁坂知事の説明とはちょっと違いますが)』な政策を使う、というものです。なぜ安上がりなのかと言うと、副作用を解決するために、また別の政策を打たないといけないからです。当然、それでまた副作用が出れば…と続いていくことも考えられるでしょう。

なるほど、それでどちらの目的とも達成されるのであれば、それは素晴らしいことです。しかし当然といいますか、疑問も湧いてきます。AとBという2つの目標がある場合、Aが実現すればBが実現せず(あるいはしにくくなり)、逆にBが実現すればAが、という状態の場合です。

今のコロナの状況で考えてみます。感染拡大を抑制するという目標のためには、外出や営業の自粛といった政策が必要であり、その副作用として経済が落ち込みます。経済を振興するという目標のためには、外出や営業を制限せず、クーポンやポイントで観光や外食を促す(奨励する)といった政策が必要です。その副作用として、感染リスクは高まります。

副作用を解決する政策を考えてみます。経済の落ち込みを回復するという目標には、外出や営業を制限せず、できる範囲でクーポンやポイントを出す、といった政策が考えられます。感染リスクを抑えるためには、外出や営業の自粛といった政策が考えられます。そして期待したほどの成果が上がらなければ、それぞれでまた別の政策が必要になります。そのため、つねに『安上がり』な政策を選んでいく必要が出てくるでしょう。

現状はGoToも観光キャンペーンもそのまま続いており、経済の持ち直しには効果も出ていると思います。しかしその一方で、感染は拡大しています。であれば、感染リスクが高まるという副作用に対してまたマンデルの定理で政策を打つべきなのですが、それはすなわち経済にはダメージを与える政策になります。そうなるとまたティンバーゲンの定理に立ち返り、別々の政策で双方の目標実現を目指しているのだから、どちらかの効果を損ねるような政策はできない、ということにもなりかねません。

実際にはティンバーゲンの定理は複雑な方程式から解を導いていくもののようですが、今の状況、つまり感染が拡大しているのにうまく切り替えられていない状況をみますと、なにか袋小路に落ち込んでいるような印象を受けなくもありません。東大経済学部卒の知事に対してド素人がはなはだ恐縮ではありますが、別々の政策で実現を目指すとしても、双方の実現した結果が相反する関係になっていては、うまくいかないどころか、政策決定で足かせになることもあるのではないかと思うのです。

恐縮ついでに言いますと、本質的には複数の政策であたるというのは間違っていはいないと思います。ただGoToなんかまさにそうですが、結果が相反する関係になっているからうまくいかないのではないかと思うのです。ですから相反しないような関係にする、つまりコロナ前から変わらないような業態をそのまま支援するのではなく、できるだけ感染リスクを上げないで経済を回すような業態や工夫・アイデアにこそ、行政は支援していくべきではないかと思います。

とにかく今の状態のままでは、重症者が増えていくことになります。大阪だけでなく周辺の府県も含んで、まず医療現場が大変なことになっていくはずです。本紙でも8月号でひだか病院のことをお伝えしましたが、ただでさえ、医療機関はコロナ以降の患者の落ち込みで大変なことになっています。国から慰労金は出たのですが、どうもそれ1回こっきりで終わっているようです。今この状態の時に、公的に下支えしなくてどうするのでしょうか。

このままでは医療現場がどんどんきつくなり、辞める人が増え、残った人がさらにきつくなるという負のスパイラルがはじまってしまいます。大阪では、すでにそうなっているかもしれません。感染対策して経済が落ち込んでしまっては自殺者が増える、というのはよく言われることですが、今のままでは医療従事者の中から犠牲になる方が出てきてしまうのではないでしょうか。

医療従事者への十分な支援というのは、『安上がり』な政策ではないかもしれません。しかしGoTo、特に観光事業者にはあれだけ配慮しておきながら、なぜ医療従事者には「感謝の言葉」ばかりで、今のこの状態でも支援しようという政策が打ち出されないのでしょうか。非常時に政治や行政が配慮する業種とそうでない業種があるのだとしたら、これは少し怖いことです。

今月記事にもしましたが、市役所や町役場がここんとこ何をやっていたかとみますと、税収が減る分を国に補填するよう求めたり、でも公共事業はやってくれと求めたり、選挙の費用を公金から支出する条例を制定したりしています。

市役所や町役場で働いている方々や、建設業や土建業など公共事業にかかわる方々、市議会議員や町議会議員の方々はそれでいいのかもしれません。しかし医療従事者をはじめとして、それ以外の住民についてどう考えているかが、ここんとこやってきたことからはちょっと見えてきません。まず、行政に近いところから手を打とうとしているように見えます。ほとんどの地方で、もっともお金をもっているのは自治体です。そこが保身に走っているとしたら、本当に大変な事態になった時、ちょっと怖いものはあります。



というわけで、今月はこれくらいにしておきます。毎年12月のメルマガでは今年なにが印象的だったか的なことを書いていましたが、今年はそんなことを書くのもはばかられるような1年でした。

でも今年1年みていて、決して人類も無力ではないというところも見せたのではないかと思います。テレワークやテイクアウト、デリバリーといった対応策がどんどん出てきて、残念ながらもたなかったところもあるものの、連鎖倒産で大不況というような事態には今のところなっていません。ワクチンだって数年はかかると言われていたのが、1年も経たずにかなり有望そうなのが出てきました。

もし20年前にこういう感染症が起こっていたら、とんでもないことになっていたはずです。ネットなんて今に比べたらまだ回線も弱々ですし、テレワークなんてとても覚束無かったでしょう。スマホもありませんでしたから、アプリでさくっとテイクアウトの注文なんてのも無理です。次々と連鎖倒産して大不況になり、町には職を、家を失った人があふれ、略奪だ暴動だといった事態になっていたかもしれません。

それを防いだのは、世界中にはりめぐらされた高速通信網であり、コンピュータの高性能化・低価格化とコモディティ化です。ティンバーゲンの定理も結構ですが、結局はそうした創意工夫、イノベーションが、来年以降の突破口になってくるのではないでしょうか。「コロナに負けない」というのも最近よく見聞きする言葉ですが、本当の意味で負けないというのはそういうことだと思います。

もちろんメンタル、気持ちの面も大事だと思います。緊急事態宣言が出てどうなるかと言われていた時、お忙しい中電話取材に応じてくださった和歌山の政策金融公庫のみなさん。とにかく何とかしなければという、切羽つまった空気と気迫が電話越しにでも伝わってきました。

これも電話でお話をうかがった、たった2人で大量のPCR検査をしていたという県の環境衛生研究センターのみなさん(あとから知事がなにかの取材に答えていたところによると、当初は徹夜で検査されていたようです)。そして何より、最前線で立ち向かっている医療関係者の方々。みなさんそれぞれのステージで、とにかく何とかしなければと奮闘されています。

お店やらイベントやらの情報がほとんどできず、フリーペーパーとしてはつらかった1年でもありましたが、紙面を通して、少しでもそういう人たちの奮闘を伝えることができていればよかったかな、とは思います。

ただイベントに関してはオンライン開催のものが増え、とり上げやすくなってきたというのは感じています。自分自身でも、今までだったら大阪とかに行かないと受講できなかっただろうな、と思うようなセミナーとかにいくつか参加することができました。来年はお店やサービスに関しても、そういう工夫の部分でとり上げていければいいなと思います。

ようやくワクチンという現実的な解が見えてきたところではありますが、来年もコロナ禍が続くことにはなると思います。ひどい事態にはならないでほしいと思うと同時に、そのためにも、本当に、本当に医療従事者への公的支援をしてほしいです。今喫緊の課題として、それ以外に何があるでしょうか?

今年(というか来年ですが)は、あんまり正月気分もないかもしれません。神頼みしたいところではありますが、私も今年は初詣はせず、いつも行っている神社の方角に向かって手をあわせるだけにしたいと思います。とりあえず、みなさんよいお年を〜

(*1)和歌山県庁メールマガジン「わかやま通信」バックナンバー 令和2年9月28日| 和歌山県ホームページ http://wave.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/mailmagaform/backnumber/r020928.html
参考=
経済学の教えをビジネス上の対策検討に活かす - ビジネスのための一般教養 http://bgeducation.blog.fc2.com/blog-entry-369.html
なぜG7で政策協調を行う必要があるのか? | 公益社団法人 日本経済研究センター:Japan Center for Economic Research https://www.jcer.or.jp/j-column/column-saito/20160418.html

有田・海南のフリーペーパー Arikaina
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